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日産「意志ある拡大」今年度の世界生産1割増の580万台

過去最高を更新。これで三菱自動車も傘下に収めると・・
日産「意志ある拡大」今年度の世界生産1割増の580万台

世界一への野心を持ち続けるゴーン社長

 日産自動車は2016年度の世界生産を前年度比1割増の580万台とする計画を主要サプライヤーに通知した。実現すれば2年連続で過去最高を更新する。うち国内生産は同2割増の105万台を計画。3期ぶりに目標とする100万台超を達成する見通しだ。人気が高まるスポーツ多目的車(SUV)の増産が世界生産を底上げする。
経済情勢などを考慮して5月中に最終的な生産計画をサプライヤーに通知する。最終的な計画は580万台から10万-20万台下振れる可能性があるが、過去最高だった前年度実績の522万台は大幅に上回る見通しだ。

 下振れ要因の一つは熊本地震による生産への影響。三菱自動車の燃費不正問題については現時点で「生産計画に影響を与えるとは聞いていない」(主要サプライヤー)という。

 国内では16年度に生産が始まる北米向け主力SUV「ローグ」、国内向けの小型車「ノート」の一部改良モデル、ミニバン「セレナ」の全面改良モデルがけん引役となる。

 15年度に120万台生産した最大の生産国である中国では、昨秋に生産を始めたSUV「キャシュカイ」が寄与し、引き続き高水準の生産となるもよう。欧州の主力拠点である英国でも16年度にキャシュカイを増産する。

 ブラジルでは新型SUV「キックス」を、インドでも新興国ブランド「ダットサン」の3車種目となる新型SUV「レディーゴー」の生産が16年度に始まる。グローバルで増産するSUVが全体を押し上げる構図となる。

(日産のサンダーランド工場)

英でSUV増産。年33万台、2ライン制


 日産自動車は2016年度に英国工場で主力スポーツ多目的車(SUV)「キャシュカイ」を前期比1割増の年33万台生産する。増産に合わせ、カルソニックカンセイとユニプレスが近隣にある工場の能力を増強したほか、バンテックが倉庫を新設した。サプライヤーの投資が活発になっている。

 日産は英国のサンダーランド工場に2200万ポンド(約35億円)を投じ「キャシュカイ」の生産能力を引き上げる。現在一つのラインで生産しているが10月から2ラインで生産できるようにする。

 現地サプライヤーによればサンダーランド工場で15年度にキャシュカイを30万生産し、今年度は33万台を計画している。需要拡大に応じて供給体制を強化する。

 これに伴い、カルソニックカンセイは150万ポンド(約2億円)を投じて、近隣にあるコックピットモジュール工場の生産能力を増強。ユニプレスも骨格部品の増産体制を整えるのに既存工場に550万ポンド(約9億円)を投資する。バンテックは最大規模の部品倉庫を今年近隣に新設した。

 日産はサンダーランド工場で別のSUV「ジューク」の次期モデルの生産を計画しているほか、昨年末には高級ブランド「インフィニティ」の生産も始めた。日産の積極的な投資で裾野産業の拡大が見込まれている。
日刊工業新聞2016年5月11日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ゴーン社長は10年前、GMとの資本提携を試みた。ずっと前から「世界一」になることへの野心を隠さない。仮に三菱自動車へ出資し事実上傘下に収めると、日産・ルノー、三菱自の3社合計の販売台数は950万台を超え、トヨタ、VWに迫る。ゴーン氏自身の野心への一番の障害は悪化しているフランス政府との関係か。また規模が拡大していっても、フランス側に多くの利益を召し上げられるという構図は変わらない。

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