複雑な地形も楽々踏破、多脚ロボットは新たなモビリティになるか
接地点追従歩行で制御
災害時に道路などが崩壊した地形の移動には困難が付きまとう。地形の状態など環境に制限されない移動を可能にしようと、南山大学理工学部の稲垣伸吉教授は、4本以上の脚を持つ多脚移動ロボットの開発に取り組んでいる。安定性が高く、複雑な地形を歩けるなどの特徴を持っており、企業と共同で6脚ロボットの実用化研究を推進する。車輪型ではない、新たなモビリティー(移動機構)の可能性に挑む。(名古屋・鈴木俊彦)
世界的に見ると、多脚移動ロボットは1980年代に注目が高まって以降、さまざまな研究開発が行われてきた。脚数が多いことは不整地を安定して歩けるという利点になる半面で、脚を動かす機構が複雑になる。実用化にあたっては歩行制御が重要な課題だ。
有効な歩行制御方法を探る中で、稲垣教授らの研究チームは独自の歩行原理として開発した「接地点追従法」をベースにしている。先頭の脚が接地点を見つけ、次の脚が追従して同じ地点に脚を置く方法だ。砂場や塀の上など不安定な場所を歩く猫、ムカデなどの昆虫で同様の動作を見ることができる。「生物を模倣した歩行制御法」(稲垣教授)と説明する。
現在までに試作した6脚ロボットは、ステレオカメラを搭載し、カメラからの情報をもとに脚の接地点をロボット自身が認識している。屋内外で歩行実験を繰り返し、接地点を障害物上に置けば、障害物を乗り越えることができることを確認。旋回や横歩きも可能なほか、1脚だけを上げて歩いたり、2脚で物を持って4脚で歩くことにも成功している。
6脚ロボットを研究する動機について、稲垣教授は「災害時に人の命を守るロボットを作りたかった」という。想定する活用の一つとして、災害時に人や物資を運ぶなどの救助活動を挙げる。
パワフルに動くためにも「モーターが肝になる」(稲垣教授)と指摘。歩行能力を高めるためにも今後、大出力モーターの搭載を視野に入れる。歩行速度の向上も課題の一つ。現状は決して速いとはいえず「まず時速4キロメートルを目指したい」(同)とする。
基礎となる歩行制御技術が進歩し、今後は実用化に向けて応用研究を加速する。災害時の救助活動以外にも、人手不足が深刻な農林業、建設業で活用できると見込む。
2020年から取り組んでいる新明工業(愛知県豊田市)との共同研究では、農業のほか、インフラの点検、メンテナンスの事業化を目指している。28年度をめどに実証を完了し、30年度をめどに本格運用を予定。多脚移動ロボットの活用範囲を広げる試みに挑んでいる。
研究チームはロボット本体の作製に3次元(3D)プリンターを利用している。「最新技術が身近になり、多脚ロボットに活用できる」と目を輝かせる。電子回路の設計、プログラミングなども研究チームが手がけており、理論だけでなく、ハードからソフトまで一貫して取り組むことで蓄積したノウハウが強みとなっている。