ニュースイッチ

スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(前編)

@渋谷コワーキングスペース「#HiveShibuya」
スカイランドベンチャーズ木下CEOに聞く、「若い天才」の探し方(前編)

スカイランドベンチャーズCEOの木下慶彦氏

 主にシード期のスタートアップを支援してきたベンチャーキャピタル、スカイランドベンチャーズ。2015年7月、東京・渋谷にコワーキングスペース「#HiveShibuya」を開設。定期ミーティングやイベントを通じて支援の幅を広げてきた。同社CEOの木下慶彦氏に、コワーキングスペースの効果や、同社が掲げる「若い天才に投資する」ことについて、ざっくばらんに話を伺った。

「若い天才を探そう」


―こちらの利用者は投資先が主なのでしょうか。
 去年の7月からコワーキングスペース「#HiveShibuya」をやっています。うちは10億円ほどのファンドで、そこから23社ほど投資しています。基本的には2~3人のエンジニアチームを軸としたスタートしたばかりの企業に投資していまして。本当に最初のシードステージと言われる段階ですね。コワーキングスペースはイーストベンチャーズというベンチャーキャピタルと、IBMスタートアップアクセラレーターにスポンサーしてもらって運営しています。投資先企業は月1万で使用できます。

 2社の投資先10社くらいがここにいてプロジェクトをやっています。基本、アンダー30歳ではじめての起業の人が多い。特に学生から22〜26歳くらいでの起業が最初の1、2年の成長スピードがすごいなと思っていて。メインターゲットだと思っています。

 僕らのコンセプトは「若い天才を探そう」というものです。ただ、僕らが投資するのは22歳くらいで2~3人でスタートしている会社とかなんですよ。一般的には取材を受けたこともないとか。会えば優秀だとはわかるんですけど、天才かどうかはわからないんですよね。でも、結果、成功する人はあとで「すごい人だった」と言われる。そういう人たちをはじめに探すんですよね。それが仕事だと思っています。

 投資先の会社、というかプロジェクトを探すときには、お金と場所とメンバー、いわゆるヒト、モノ、カネってやつですね。それが重要です。特に「場所」って結構重要で。人が集まるのも場所ですし。そういった意味でも#HiveShibuyaを運営しています。

―若い天才にリーチしたいということですが、どうやって「天才」を探しているんですか?
 僕は7年くらいベンチャーキャピタルをやっています。最初の2年くらいは大和証券のベンチャーキャピタルのチームで投資。その後1年くらい、いまと同じような独立系ベンチャーキャピタルに居て、スカイランドを立ち上げて3年くらいやっています。

 大和のときもそうだったんですけど、「ここ成功しないよ」って言われながらも成功した会社も結構ある。急速に2、3年でバッと成長した会社は僕らの周りの会社やうちが投資している会社だけではなく、他の会社も含めると結構あるんですね。みんな1年で急速に成長したってところにフィーチャーされがちなんですけど、実は長く続けられる人が結果、成功するんです。50年続けられるか。僕はそこを見ています。

 僕らの投資先はまだプロジェクトをやっていない人も多いので、その場合、他の部分で見ています。例えば、プログラマーにはどれだけプログラミングを続けているか聞いています。毎日プログラミングをしているような人材は、僕らの投資先がメンバーを採用したい時、本当にコアになるようなメンバーです。

 大学生でも同じように質問します。何かを毎日続けているか。ゲーム大好きな人なんかいいと思っています。SNSやブログで発信し続けている人もいいと思います。プログラミングをやっている人ってゲームを長年大好きな人が多いんですね。そういう傾向から何かを長く続けられる人を探していますね。

 投資先をスタートアップコミュニティーで探すなど、普通にみんなが普通にやっている方法で探してもいます。そこでも議論しているのはやっぱり、どれだけ長く続けられるかですね。

お金の後押しは大きい


―結構、やる気というか、「ヒト」の部分が大きいように思います。
 会社の事業って変わるんですよね。事業は5年とかで無くなると思うんです。例えばDeNAとかグリーなんかはゲームで作った会社なんですけど、向こう10年ゲームじゃ厳しいんですよね。でも別の事業を次々増やすことで続けています。グーグルとかフェイスブックって創業事業が強いんですけど、でも、いまの事業が0になったとしても続けていけると思うんですね。創業メンバーがやる気でやっていけば大丈夫だと思うんですよね。

―でも、強い意志を持っていても続けられない人もいますよね。
 アンダー30歳の人が起業しても続けられないのは、センスがないからという理由もありますが、お金がないからというのが大きいですね。
スポーツの場合も近いものがあって、スポーツもセンスがないから辞める人もいると思いますけど、お金が続かない、お金が稼げないからやらないという理由もあります。 

 でも、その人が続けられるのであれば1年後とかに結果が出るかもしれない。僕らはそこを議論して投資しています。
 
 シード期や会社設立前から関わっているのですが、企業に至る前に半年とか1年とか長いところで2年とかかかるんですよね。そこのリスクを取って投資するところって、特に日本の場合はどこにもなくて。僕らはその人が続けられる人であるなら、1年後2年後に結果が出るものだと思っています。

 50年とか続けられる人って相当いないと思いますよ。スタートした時はエネルギーがあるんですけど、厳しいタイミングは何回か訪れます。そういうサイクルがあるんです。そういう時に一番プッシュになるのはお金だと思います。エネルギーと金が入ってきた時にすごい力がでますよ。これは投資ではなくて売り上げ増でもよくて、単純にお金が入ってくれば次の手を打てますし。

<次ページ:新たなサービスや事業を生み出すために必要なことは?>
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
「投資とは?」「シード期のスタートアップとは?」という基本的な質問から、「天才ってなんだろう?」という話まで、じっくり伺ってきました。後編は「天才」にもう少し切り込みます。

編集部のおすすめ