企画・デザイン×技術力が決め手! 中小企業が「脱下請け」を図る方法


ミューテクノ、金属片使った“精巧なバラ”のインテリア製品発売


【立川】金属の冷たいイメージを一新―。ミューテクノ(東京都日野市、松下憲明社長、042・586・0411)は、ステンレスなどの金属片を使ったバラのインテリア製品「BLOSSO(ブロッソ)」をこのほど発売した。主力事業の精密板金加工で培った技術を生かして、“精巧なバラ”に仕上げた。価格は台座を含めて2万円から(消費税抜き)年間2000万円の売り上げを目指す。

 厚さ0・3ミリメートルのステンレス板をワイヤ加工機でバラの花びらの形に切断。独自開発した特殊な工具を使って、切断した金属片を花びらが開いた形に折り曲げる。

 一つのバラに使用する金属片は10枚以上。溶接をせずに、金属片同士をかしめることで取り付ける。ミューテクノの谷口栄美子専務は「バラの構造や一枚の花びらの大きさなどを知るために、バラの図鑑を何冊も買って確かめた」と話す。

 カラーバリエーションは6種類。ブロッソにはマグネットがついているため、服などに取り付けられてアクセサリーとしても使用できる。衣類や手元を傷つけないように、サンドペーパーなどを使い手作業でエッジ部の面取りを行う。

 同社は2014年度から東京都中小企業振興公社多摩支社の製販一体型新製品開発支援事業「事業化チャレンジ道場」を受講している。同事業での新製品企画がきっかけとなり製品化した。谷口専務は「自社ブランドの開発は下請け体質からの脱却だけでなく、技術力のアピールにもつながる」と強調する。

新潟・三条市、ダイハツ「コペン」とコラボ-地域ブランドに手応え


 新潟県三条市のメーカーが、企業の枠を超えてモノづくりの地域ブランドを作ろうとしている。市・工業会・商工会議所が三位一体となって推進する「LOVE SANJOプロジェクト」。第1弾としてダイハツ工業の軽オープンスポーツ車「コペン」とコラボレーションした。出発点はコペンと三条のモノづくりのある風景を描いたイラスト。各社がアイデアや技術を持ち寄ってこれを実現したことで、プロジェクトの手応えや今後の展開が見えてきた。

 「あのイメージのまま作りました」―。外山製作所の外山裕一社長は、完成したコペン用カーゴトレーラーを前に笑顔をみせた。コペンユーザーの悩みの一つがアウトドアを楽しみたいが、車両本体に十分な荷物の収納スペースがないこと。その解決策としてトレーラーづくりに取り組んだ。

 2014年9月のプロジェクトキックオフから外山製作所とシマト工業、板垣金属の3社が協業し、製作期間はわずか2カ月。年明けから各地で開かれたドレスカーショーのダイハツブースで披露された。

 来場者の反応は上々。「いくらでも良い。譲ってほしい」との声も上がった。ニッチ市場で消費者とつながって価値を認めてもらう。これこそ三条が狙う“LOVE SANJO”の理想形だ。

 「1年後には販売ルートに乗せたい」(外山社長)。100万円以下の値付けを視野に、今後も原価低減などの改良を進める計画。いずれは県内のダイハツ店にも取り扱いを提案する構想だ。

 外山製作所は自動車シート部品などを手がける金属加工メーカー。自動車向けビジネスの浮き沈みを経験し「自分のブランドを持って生き残ることを考えなければならない」(外山社長)との危機感を常々抱いてきた。

 三条市は下請け企業の集積地として世界経済に翻弄(ほんろう)されてきた。キックオフ時に国定勇人市長は「産業地域として持続していくには、価格競争からの脱却が不可欠だ」と意義を述べた。経済団体や行政が問題意識を共有し、地域が総力を挙げてブランドを売ろうとしている。

 コペンとのコラボは、ガレージ関連の製品や着せ替え用ボンネットの製作でも成果を創出した。三条の地場産品ともいえる工具については、市内各社が一品ずつ出し合って、コンセプトを共通にした製品を完成させた。

 ダイハツブースの一角に製品を並べた“LOVE SANJO”。マルト長谷川工作所の長谷川直哉社長は「我々、ペンチだけ持っていても、こんな目立つ場所には出展できない」と喜びを隠さない。産地が団結し、コペンと連携できたことに手応えを感じている。

 一方で「これを皮切りにブラッシュアップしていかなければならない」(長谷川社長)と気を引き締める。ブランドのオリジナル品とは何か、まだ煮詰める必要がある。三条のモノづくり力を発揮できるようなコペンに続く新たな連携相手も発掘しなければならない。

 今後“LOVE SANJO”ブランド品は三条工業会が窓口となり、近く順次発売する予定だ。すでに専用ホームページを開設し、製品と各社のモノづくりの背景など訴求を始めた。

 コペンは“LOVE LOCAL”をテーマに掲げ、地域に軽オープン車がある暮らしの楽しさを創出するというコンセプトで企画された。その趣旨からも、モノづくりの街・三条との連携は、外板“着せ替え”を特徴とするコペンの持つ可能性“地方創生”の一つの形を示したとも言える。

 軽自動車は地方の足。プロジェクトに協力するダイハツの藤下修チーフエンジニアは「取り組みを通じてダイハツファンが増えれば、いずれ乗り換えてくれるはず」と長期的な効果を期待する。まずは三条市が新年度の当初予算案にコペン1台の購入を盛り込んだ。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2016年4月28日 中小企業・地域経済2面/2015年11月10日 モノづくり基盤・成長企業面/ 2015年3月6日 列島ネット2面

  • 1
  • 2
宮里 秀司

宮里 秀司
04月28日
この記事のファシリテーター

古くて新しい「脱下請け」という言葉。ネットの発達で世界が狭くなった今、外部のノウハウを活用すればアイデアしだいで中小企業が自社製品を作ったり、大手企業を巻き込んで製品開発を行ったりすることも可能な時代に入ってきました。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。