ニュースイッチ

「ペロブスカイト太陽電池」に自治体が熱視線…愛知県は推進協、福岡市はドームに3000kW

「ペロブスカイト太陽電池」に自治体が熱視線…愛知県は推進協、福岡市はドームに3000kW

アイシンが研究開発するペロブスカイト太陽電池。愛知県では県や市町村の公共施設などに実証導入する

軽くて曲げられる次世代型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池(PSC)」に地方自治体が熱視線を送っている。愛知県は、関連企業や学識経験者、市町村が参画し、PSCの導入拡大に向けた課題や解決策などを議論する推進協議会を今春立ち上げる。福岡市は、2030年までに福岡ドーム(みずほPayPayドーム福岡)の屋根など市内にPSCを3000kW以上設置する計画を持つ。多くの自治体は温室効果ガス排出量を削減する目標の達成に向けて再生可能エネルギーである太陽光発電の導入を推進しているものの、従来型の重いシリコン太陽電池だけでは設置場所が限られ、目標の達成が難しい見通しを立てている。そうした課題を克服する手段として、PSCの活用を見込む。一方、PSCの事業化を目指す事業者は、市場の立ち上がり期に先行導入する利用者として自治体に期待を寄せる。

【4刷決定】次世代型太陽電池の本命がよくわかる新刊「素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池」(技術監修:宮坂力)好評発売中

全国に先駆ける

「全国に先駆けて(ペロブスカイト太陽電池を)社会実装するとともに、再生可能エネルギー導入量の飛躍的な増加を目指す」。愛知県の大村秀章知事は15日の定例会見で「あいちペロブスカイト太陽電池推進協議会」の設立を発表した。全国の民間企業などを対象に革新的な脱炭素事業のアイデアを募集し、支援する事業において、PSCの事業化を目指すアイシンや関西電力など3者が提案したプロジェクトを採択した。

このプロジェクトでは県や市町村の公共施設、民間施設にアイシン製のPSCを実証導入し、課題の把握や解決策の検討、導入モデルの確立などを行う。協議会は建材・住宅メーカーやゼネコンなど、PSCの社会実装に不可欠な流通や設置・施工、維持管理などを含めたサプライチェーン全体の関係者が参画してプロジェクトを後押しする。

愛知県は温室効果ガス排出量について30年度に13年度比46.0%削減を目指しており、そのために県内の再エネを21年度比1.7倍の580万kWに増やす目標を掲げる。これを達成する上で、太陽光発電は171万kW分の上積みが必要と試算している。その中で、耐荷重の小さい屋根や建物の外壁などに設置できるペロブスカイト太陽電池に大きな期待を寄せる。愛知県環境局地球温暖化対策課は「従来のシリコン型だけでは(重量の問題などで設置場所に制限が出てくるため)目標達成が難しい見通しがある。(PSCにより)太陽電池の設置対象エリアが一段と広がれば、(目標達成に向けて)大きく前進する」と説明する。同時に、新しい技術を活用した産業が生まれ、投資が活性化されることで「経済面でも地域への貢献度は高い」(愛知県地球温暖化対策課)とも見込む。

一方、PSCの事業化を目指す企業にとっても自治体の協力は大きい。自治体と連携することで、社会実装に向けたサプライチェーンの構築に必要となる多様な企業を巻き込みやすくなる。アイシンのE-VC事業戦略部に所属する堀智主査は「自治体は我々が直接付き合いのない企業とつながりがある。また、ほかの自治体とのつながりもあるため、愛知県で(サプライチェーンを含めた)社会実装のモデルができれば、横展開できる」と展望する。

ペロブスカイト太陽電池の先行的な利用者としても期待する。アイシンの堀主査は「ペロブスカイト太陽電池を設置してもらえる場所として公共施設の可能性は非常に大きい。(実証導入などを通して)そこで使ってもらうための課題を把握して商品に反映したい」と意気込む。

規制緩和の特例も

PSC活用の動きが顕在化している自治体は愛知県だけではない。福岡市は30年に向けて約4700kwの再エネを新規に導入する方針で、その7割にあたる3280kwについては積水化学工業のフィルム型ペロブスカイト太陽電池を導入する計画だ。福岡ドームの屋根に3000kW設置したり、公共施設や商業ビル、病院施設の屋根や壁面などに導入したりする。導入促進策として、事業用太陽光発電設備を設置する際に建物所有者にかかる固定資産税を軽減するほか、屋上防水の更新時に、防水材と一体化したペロブスカイト太陽電池を導入できるような建築基準法の特例の整備も進めている。

福岡市環境局脱炭素社会推進課は「福岡市は都市部。エネルギーを消費する側でありながら、創エネルギー設備を設置できる適地がかなり狭まっている。PSCはそうした課題を克服できる」と見通す。

神奈川県はPSCの事業化を目指すエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)と日揮、マクニカとペクセル・テクノロジーズ(神奈川県川崎市)のそれぞれと連携協定を結んでいる。そうした協定に基づき神奈川県藤沢市の江の島にある植物園では実証実験を実施中。市庁舎に展示したり、イベントを開いたりして市民への周知や理解促進も図っている。神奈川県環境農政局脱炭素戦略本部室は「(実証実験やイベントなどを通して)ペロブスカイト太陽電池が受け入れられやすい環境を醸成しておくことで、実用化された時の一刻も早い普及につなげたい」と力を込める。

神奈川県と日揮、エネコートテクノロジーズは2024年7月にペロブスカイト太陽電池の実証実験を江の島で始めた

このほか、東京都や横浜市なども実証事業を進めている。経済産業省が2024年11月に策定したペロブスカイト太陽電池の普及促進戦略(次世代型太陽電池戦略)では、PSCの先行的な導入が見込まれる主体として「自治体を含む公共部門」が挙げられた。従来型の太陽光発電だけでは設置適地が限られてしまうため、再エネの導入量がなかなか増やせないという課題は多くの自治体が直面している。PSCの活用を模索する自治体の動きは今後さらに広がりそうだ。(葭本隆太)

【4刷決定】次世代型太陽電池の本命がよくわかる新刊「素材技術で産業化に挑む ペロブスカイト太陽電池」(技術監修:宮坂力)好評発売中
ニュースイッチオリジナル

編集部のおすすめ