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トヨタ技能員らが仕入れ先の従業員に、「寄り添い活動」本格化の狙い

トヨタ技能員らが仕入れ先の従業員に、「寄り添い活動」本格化の狙い

トヨタの現場力を仕入れ先にも展開する(元町工場の組立生産ライン)

供給網底上げ

トヨタ自動車は技能員らが一定期間、仕入れ先の従業員として活動し、生産現場の課題を共に解決する新たな取り組み「寄り添い活動」を本格的に始めた。仕入れ先の改善活動や難加工への挑戦などをトヨタの技能員が支援する。仕入れ先の意向を把握した上で最適な人材を支援担当に選ぶ。1次取引先(ティア1)だけでなく2次取引先以降も対象とし、サプライチェーン(供給網)の競争力強化や自動車業界の底上げを図る。

寄り添い活動は2023年から試行的に実施し、24年から本格化したトヨタの新たな仕入れ先支援プログラム。仕入れ先の現場ニーズに即し、共に創意工夫を経験する。

スタートして間もない活動だが、数件のマッチング実績が出てきた。支援期間は仕入れ先の意向によるが、実例の一つであるファインシンターでは少なくとも2年間、トヨタの技能員がファインシンターの社員として働く。今後は取り組みの認知向上や優良事例を創出し、マッチング件数を引き上げる。

従来もトヨタは多様な方法で仕入れ先を支援してきた。出向や出張、転籍、研修といった形態で実施している。短期の設備保全や災害復旧なども行う。これに加え、寄り添い活動を新たな受け皿として展開。仕入れ先で技能員が改善や技術の面白さを伝えることで、技能員がトヨタに戻った後でも改善の文化が続くことを期待する。トヨタにとっても技能員が自らの技能を発揮する場の提供や、仕入れ先とのコミュニケーション強化などにつながる。

自動車業界は電気自動車(EV)をはじめとした電動化や、ソフトウエアにより新たな価値を提供する「知能化」など産業構造の変革期にある。各社が新たな領域に挑戦する必要がある中、トヨタの知見を共有することでサプライチェーンの底上げを目指す。


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日刊工業新聞 2024年10月01日

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