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なぜ地方にIT企業が集まり出しているのか

東京の人材確保が困難に。宮崎・日南市はメディア企業がオフィス開設
なぜ地方にIT企業が集まり出しているのか

南房総市の旧三芳保育所

 ポート(東京都新宿区)は宮崎県日南市に事業所「日南オフィス」を開設する。仕事や旅行、健康などに関するインターネットメディア記事の制作・編集拠点とする。商店街の空き店舗を改装、4月から操業を始める。投資額は約1900万円。本社以外の拠点開設は初めて。同社はインターネットメディア運営事業者。2020年度までに92人を採用する方針。地方創生で日南市と連携。IT企業誘致に向けた新サービスの創出にも取り組む。

千葉県、空き校舎に企業誘致


REF:
 千葉県は県内の人口減少地域で、学校などの空き公共施設を活用した企業誘致支援事業を始める。IT・ベンチャー企業を中心に、地方移転やサテライトオフィス開設への関心が高まっており、これを取り込む狙い。初年度に50件のマッチングを目指す。事業費は2500万円で、国の地方創生加速度交付金を活用する。

 銚子、いすみ、南房総市を中心とする県北西部や南部の30市町村が対象。これらの地域では工業団地の不足などにより企業誘致が進んでいない。そこで、人口減に伴い増えている小中学校などの空き施設を企業の事務所や作業場として活用する。東京都心まで1―2時間程度にありながら、自然豊かな環境を企業に訴求する。

 市町村が企業に対して保有施設や利点などを紹介するフォーラムを開催していく。県は、企業へのヒアリングを通して進出可能性のある企業を探し、市町村に紹介する。

 また、地域ごとに行政と金融機関、大学、商工会議所などで企業進出に特化した支援組織を構築。ワンストップ窓口として機能させる。

 対象市町村の一つである南房総市では、これまでに福祉センターなどの空き公共施設に7件の企業を誘致した。公共施設の3年間無償貸し付けなど支援を充実させており、このノウハウを他地域にも展開していく。

京都・南丹市は空き家サテライトオフィス


日刊工業新聞2015年12月9日


 京都府南丹市は、地域経済の発展と雇用促進などを目的として空き家を活用したサテライトオフィスの誘致に乗り出す。過疎化が加速する京都府中部の丹波地方にネットワーク環境が活用できるスペースを提供して、情報通信などの企業集積を狙う。

 南丹市は旧美山町大野地区の空き家をサテライトオフィス候補地として企業誘致を開始した。同市役所で2016年1月に見学を含めた相談会の実施や、2月には空き家を活用したアイデアを提案するコンテストを開催する。

 過疎地域のサテライトオフィス誘致例は、徳島県神山町が全国的にも有名だ。クラウド型名刺管理サービスを手がけるSansan(東京都渋谷区)が「神山ラボ」を構えるなど、東京のIT企業の進出が相次ぐ。

 南丹市は園部町や美山町などが合併し、06年に誕生した。ただし、府北部などとともに過疎化が懸念されている。南丹市は豊かな自然環境をもとに、入居者の企業イメージ向上に貢献させたい考えだ。

 主に大都市圏のIT産業やデザインなどの企業を想定している。一方で、京都や大阪へのアクセス面の良さも誘致のPRポイントとなりそうだ。

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日刊工業新聞2016年4月6日付ほか
田鹿倫基
田鹿倫基 Tajika Tomoaki 日南市 マーケティング専門官
宮崎県日南市はIT関連企業の誘致に力を入れていて、今年に入ってから数社の立地が発生している。東京都の地価上昇、人件費の上昇、人材確保が難しくなってきた背景があり、インターネットが繋がっていれば、遠隔で働くことができる業種を中心に、今後も地方への移転は継続して起こるだろう。

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