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佐川・日立物流、資本業務提携。「2ー3年で経営統合」

国内2位へ。陸運業界、競争加速
 佐川急便を傘下に持つSGホールディングス(SGHD)と日立物流は30日、資本・業務提携すると発表した。2社合計の売上高は陸運業界2位になる。SGHDは日立物流の株式29%を約875億円で、日立物流は佐川急便の株式20%を約663億円で取得する。佐川は配送業務に強みを持ち、日立物流は企業物流を包括的に受託するサードパーティー・ロジスティクス(3PL)を得意とする。両社の強みを融合して競争力を強化する。

 各社は同日、それぞれ取締役会を開き、資本・業務提携を行うことを決議した。日立物流の株式は、同社の親会社である日立製作所がSGHDに売却する。日立製作所の出資比率は59%から30%に下がるが、引き続き筆頭株主を維持する。日立物流の株式の譲渡日は5月19日を予定。SGHDは日立物流の第2位の株主になる。SGHDは5月20日に佐川急便の株式を日立物流に譲渡する予定。

 業務提携では、相互の顧客をベースに置いた営業の連携を強化する。車両の集中管理や車両センターの共同活用による車両稼働率の向上に取り組む。また、両社のIT技術を駆使した最先端物流の展開、アジアを中心としたグローバル事業の強化なども手がける。

「海外・3PL」の強み生かせるか


 国内陸運業界3位のSGホールディングス(SGHD)と日立製作所の子会社で業界4位の日立物流が資本・業務提携する。川上から川下までの物流をカバーしたい日立物流と、物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス(3PL)事業を強化したいSGHDの思惑が一致した。

 「実業できちっとした積み上げができる。日立グループはグローバルを見据えており、それに対して強い意志があるかどうか」。30日に都内で会見した日立物流の中谷康夫社長は、SGHDを資本・業務提携先に選んだ理由をこう語った。

 荷主企業が求めているのは、あらゆるサービスを国内外分け隔てなく対応できる物流サービスだ。SGHDは川下までの配送業務で実績があり、アジア事業展開を強化してきた点などが、日立物流が指向する総合物流サービスの姿に合致した。

 一方、調達物流など川上への物流業務を広げたいSGHDにとってグローバル展開する日立物流のネットワークは魅力的。SGHDの町田公志社長は「グローバル・シームレスがキーワードになる」と強調した。また日立物流との資本・業務提携により、日立グループのIT技術などの活用、海外共同展開なども視野に入れて競争力を高める考え。

両社とも経営統合への意思を持って業務提携する。「2―3年かかるだろうが、スピード感をもってやりたい」(町田SGHD社長)。実務レベルでの提携効果を見極めて経営統合を検討する。ビジネスモデルの再構築や企業文化の融合により、シナジーを創出することが求められる。
●日立物流●
日立製作所の物流子会社として、1950年創業。企業間物流に強く、15年3月末で国内364カ所、海外408カ所に拠点を置く。連結従業員数は2万4728人。日立製作所が53.3%を出資、日立グループ全体で59%の株式を保有する。
●SGホールディングス●
宅配便事業を手掛ける佐川急便などを傘下に持つ持ち株会社として06年設立。1957年に創業者の故佐川清氏が京都で始めた運送業が起源。佐川急便は65年に設立。連結従業員数は15年3月時点で8万315人。国内外合わせて1434カ所に拠点を置く。
日刊工業新聞2016年3月31日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日立製作所の視点から見てもなかなか面白い。日立物流は日立の上場子会社でも一番と言っていいほど親会社からの自立心が強く、長く日立本体もなかなかコントロールできていなかった。それでも日立の中西CEOは以前から、「日立グループにとって物流事業は大事」と話していた。今回で連結子会社から持ち分法になる。三菱重工との火力統合会社も出資比率はマイノリティー。 上場子会社を含めグローバルで生き残れなければ、子会社から切り出すという方向へ一段と踏み込んだと言える。

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