AIに著作権は不要?結局グーグル次第か

「過剰な保護はそぐわない」知財本部の検討会が見解まとめる。次年度へ持ち越しさらに議論

 人工知能(AI)の著作権の扱いについて過剰な保護はそぐわないという見解を政府の検討委員会がまとめた。現在はAIによる創作物は著作権法の保護対象にならないため、法制度には大きな変化はない。AIに著作権を与えるとコンテンツの独占や排他が起こるという懸念を受けた結果だ。ただ委員からは著作権法には抜本的な改革が必要との意見が相次いだ。検討会は年度をまたいで延長し、4月に報告書をまとめる。2016年度に策定する知的財産推進計画に反映する。

 知的財産戦略本部(本部長=安倍晋三首相)の「次世代知財システム検討委員会」でクリエーターや法学者、情報科学研究者が議論している。AIの著作権は検討テーマの一つ。インターネット上で起こっている知財侵害への対応や、知財の権利処理について幅広く検討している。

 日本写真著作権協会の瀬尾太一常務理事は「人間の思いや感情をもとに作られたものではない〝情報の塊〟が溢れ、コンテンツの世界は変わってしまった。著作権法は1970年に大改正されて以来、継ぎ足し継ぎ足し修正されて45年間ここまで来た。

現行法へのつじつま合わせでは保たない


 もう現行法へのつじつま合わせでは保たない。次の50年を見据えた議論を始めるべきだ」と訴えた。本来、検討委員会の最終回であった第7回会合で議論の根本を問う意見が出た。

 賛同する委員は少なくない。骨董通り法律事務所の福井健策弁護士は「著作権法は専門家が読んでも理解できない」と指摘。国立情報学研究所の喜連川優所長は「絵や漫画とプログラムが同じ文脈で扱われていること自体がおかしい。プログラムはコピーされることが当たり前。抜本的な改革が必要」と続いた。

 大改定には10年かかるという意見もあるが、著作権が分岐点にあることは間違いない。内閣官房の横尾英博知的財産戦略推進事務局長は「著作権法は制度として〝バグ〟が指摘されている。次期知的財産推進計画など、イノベーティブな役割を果たす」と力を込める。
 

巨大プラットフォーマーが決めるルールの方が影響は大きい


 ただ今後起こり得るビジネスチャンスやイノベーションをすべて予測して、制度を作ることは不可能だ。創作のAI化やコンテンツ流通の多様化は急激に進んでいる。AI著作権については一国の法律よりも、米グーグルなどの巨大プラットフォーマーの決めるルールやインセンティブ制度の方が影響は大きいという結論になった。

 AIへの著作権保護の有無にかかわらず、人間のクリエイターはAI創作物との市場競争は避けられない。さらに、すでにコンテンツが氾濫しているため、著作権で守られたコンテンツを個々に販売するビジネスモデルは崩壊しつつある。

<次のページは、一国では実行性を担保できない>

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日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
03月25日
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議論は人間と変わらない作品を作るAIが実現するという前提で進んでいます。まだ二時間ドラマは作れませんが、楽曲や速報記事などのAIは実用化しました。AI自体が権利や責任の主体になるかどうかも議論し、答えは「長期的にもAIは道具」(喜連川優所長)。クリエイター保護はプラットフォーマー次第。●●派や●●流など、クリエイターの派閥が利権を握るよりはPV数の方が公平にクリエイターを育てるのかもしれません。瀬尾常務理事の「誰にもわからない著作権法を、誰でもわかる法律に」は実現できれば世界のお手本になると思います。
(日刊工業新聞編集局科学技術部・小寺貴之)

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