早稲田大学が半導体エンジニア育成で一手、熊本県と連携協定の背景事情
早稲田大学は熊本県とカーボンニュートラル(CN、温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて包括連携協定を結ぶ。地球規模の省エネに貢献する半導体のエンジニア育成が柱。早大大学院の北九州キャンパス(北九州市若松区)を核に連携を推進。熊本県に拠点を構える半導体関連企業にも連携を呼びかける。台湾積体電路製造(TSMC)が進出するなど半導体産業の集積が進む九州で、早大の存在感を高める。
早大の大学院情報生産システム研究科はアジアからなどの留学生が約9割を占め、北九州学術研究都市に九州工業大学、北九州市立大学とともに活用できる半導体クリーンルームを持つ。研究インフラを活用し、エンジニア輩出や企業人のリカレント(学び直し)教育を後押しする。
熊本県ではTSMCが工場建設を進めるほか、三菱電機やソニーグループも大型投資を計画する。半導体バブルの様相を呈する一方、関連産業も含めて人材獲得競争が熾烈(しれつ)だ。熊本大学は「半導体・デジタル研究教育機構」を設置し、イノベーション人材の育成に本腰を入れている。
一方、早大はベンチャーキャピタル「早稲田大学ベンチャーズ」を創設し、半導体など先端技術のスタートアップ育成を強化しているほか、カーボンニュートラル宣言を発出し、全学の研究力の強みを結集する方針を打ち出した。2022年には「カーボンニュートラル社会研究教育センター」も新設した。また九州では、九州電力、鹿児島県薩摩川内市などと、CNと資源循環の拠点「サーキュラーパーク九州」を推進している。
【関連記事】 世界の半導体工場で、揺るぎない信頼を集めるクリーン搬送装置
日刊工業新聞 2023年04月14日