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「国際卓越大学」へ強化計画、東京理科大プランの魅力

東京理科大学は国際卓越研究大学の認定に向け、活動強化計画をまとめた。大学院修士進学率を現状比15ポイント増、博士進学率を倍に高める。また分野融合研究に参加する教員を現在の6割から10割へ引き上げる。直近4カ年で5%強と、全私立大学平均の2・5倍近い独自基金の運用益も活用する。同大は学生数が約2万人おり、理工系総合大学で随一の規模。国立大学との違いを生かし、日本における私立理工系大規模大学の先進モデルを確立する。

東京理科大の現在の修士進学率は50%(うち他大学進学が20%)、博士進学率は5%。これを引き上げ、高度人材の育成数を増やす。

分野融合の研究組織「総合研究院」には、防災や宇宙システムなど26のグループがある。10年後には全教員が参加し、40グループに増やす。未来の都市と生活を切り口とする2センターや、国際交流の組織・建物の新設を計画する。これにより被引用回数が各分野で上位10%に入る「トップ10%論文」の割合を現在の6・5%から10年後は13%、25年後は20%にする考えだ。

東京理科大関連のスタートアップはこれまでに約150社ある。10年後に年100件、25年後に年250件の創出を目指す。同大のベンチャーキャピタル(VC)は三つ目のベンチャーファンドを計画中。実績の高い資産運用との連動が期待できる。石川正俊学長は「『科学技術が社会を動かす』という価値観を、全学で共有して社会を変えていく」としている。

同大は7学部・研究科を持つ。学部生の数は1学年当たり約4000人。約2万人の学生のうち、卒業後に同大院以外に進学したり就職したりと外部で活躍する人数は、東京工業大学東京大学の理工農系出身で外部に出る学生の数よりも多い。理数系の学校教員の養成や社会人向け夜間教育を長く手がけていることから、科学、技術、工学、芸術、数学を総合的に学ぶSTEAM教育やリカレント(学び直し)教育の実績もある。

日刊工業新聞 2023年04月13日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
東京理科大プランの魅力は、他の応募大学に劣って見える部分を、逆手にとった点だ。国立の研究大学における理工系の修士進学率は8-9割だろうか、増やす余地はあまりない。内部進学も多く、「高度人材の輩出数をぐっと増やせるか?」と問われると、確かに今ひとつだ。また、国立大の場合は、分野を狭く捉えた研究で業績が高くても、分野融合に関わる教員はどうだろう、1-2割といったところか。一方、基金運用の場合、国立大は元本保証のもの以外での経験が乏しい。「弱みを強みに転嫁する」、これは私の好きな言葉だ。

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