中・大型旋回ベアリングを一貫生産 ―建機向けなど、回転支える重要部品を供給
記者の目/ここに注目
□鍛造から組立まで全工程を手がける企業は国内唯一
□市場はグローバル、社員の語学習得を推奨
アンテックスは中型から大型の旋回ベアリングを製造し、建設機械メーカーなどに供給している。材料となる鋼材を完成品に仕上げるまでには、鍛造、機械加工、熱処理、組立など複数の工程を経る。一連の工程すべてを網羅できる企業は国内では同社の他になく、唯一無二の存在として日本の産業の発展に寄与する。製品の大半は海外で使われるなどグローバルでも活動。建機以外の新分野開拓にも積極的に取り組んでいる。
強固な事業基盤を構築
旋回ベアリングは機械の回転部分に使われる機械要素。モータから伝わる回転動力を伝達したり回転を滑らかにしたりする働きを持ち、安全かつ正確な回転動作を支える重要部品と言える。 同社が手がける製品のサイズは直径500mm〜3500mm。業界では中型から大型に分類される旋回ベアリングで、ショベルカーやクレーン車の搭乗部と足回りをつなぐ旋回部分などに採用されている。

各製造工程には、それぞれ特殊で大規模な設備と技術が必要だ。一つひとつの工程に求められる技術水準は高く、一つの工程だけを専門に請け負って加工する企業もあるほどだが、同社はその全工程を担う。一貫生産のため顧客の要望に柔軟に対応できる利点もあり、他社が簡単にまねできないモノづくりを通じ、強固な事業基盤を構築している。
取引先は建機分野が8〜9割を占める。一方、近年は新規分野の開拓にも注力している。工場の生産自動化設備から遊園地の遊具まで、幅広い分野に同社製品の活躍の場は広がっている。大型リングの希少な製造技術を最大限に活かすべく、旋回ベアリングだけでなく、部材として製品を供給するような方向性も模索する。「建機分野で培った技術を応用し、新市場を開拓する活動は常に続けていく必要がある」と安藤社長は話す。
コミュニケーション力が必要不可欠
生産拠点は茨城県北部の高萩市にある高萩工場。1980年に同地に進出して以来、生産能力の増強を段階的に進め、現在では高萩工場周辺に第2工場と第3工場も展開する。営業部門を含め、ほぼすべての従業員が同地で働いている。
一口に旋回ベアリングと言っても作る製品はさまざまだ。形状やサイズはもちろん、内輪に設ける歯の加工精度や強度を高めるための熱処理の仕方など顧客の要望は多岐にわたる。そうした多様な顧客の要望に応えるため、受注活動を担う営業部門を含め、設計、生産技術、製造、品質保証など工場の各部門が連携したモノづくりを実践している。それだけに、「周囲の人たちとの円滑なコミュニケーションができることは必要不可欠だ」と安藤社長は求める人材像を説明する。


市場のグローバル化も進んでいる。製品の約1割は直接海外に輸出するほか、同社製品を組み込んだ建機の大半は海外で使われており、営業や設計、品質保証などの部門では海外の顧客と直接やりとりする機会が増えている。そこで同社では英会話スクールに通う費用を会社が全額負担するなど、従業員の語学習得を支援している。
同社は創業100年を越える伝統あるモノづくり企業だが、時代に応じて常に進化を続けてきた。安藤社長は「老若男女国籍を問わない多様な人たちが会社や工場を運営していく時代になっていくだろう」と将来を見据え、「今後は多様な人たちが働ける基盤づくりにも取り組みたい」と話している。
理系出身の若手社員に聞く
社外の人と接する機会が多く、刺激受ける

顧客の求める仕様や用途に応じてベアリングを設計しています。建機分野がメーンですが、新規分野の設計案件も多く、例えばはしご車に使われる特殊形状のベアリングなども担当してきました。自分が携わった製品がモノとしてでき上がるのを見られるのは、仕事の醍醐味の1つです。
顧客を含めて社外の人と接する機会も多く、いつも勉強になる話が聞けて、たくさんの刺激を受けています。また、上司や社内の他部門とも連携しやすい雰囲気があるのは、当社の特徴だと思います。
会社DATA
所在地(本社)東京都港区高輪2-15-19
(高萩工場)茨城県高萩市上手綱3333-24
設立 1917年
代表者 代表取締役社長 安藤 洋平
資本金 5000万円
従業員数 300名
事業内容 旋回ベアリングの製造・販売
URL https://www.antex.co.jp/recruit