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複合素材で車のデザイン変える―めっき・塗装やガラスを超える性能のフィルム

理系・語学系×企業ジョブマッチング/ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー
記者の目/ここに注目
□個々の社員がやりたいことを追求し「白地に絵を描く」
□欧米のEV中心に売り上げ拡大、新入社員も第一線で活躍

ウェーブロック・アドバンスト・テクノロジー(略称WAT)は、異なる特徴を持った素材を最適な組み合わせで提供し、付加価値のある製品を生み出している。その一つ、金属調加飾フィルムは金属と樹脂を組み合わせたフィルムで、金型にセットした後に溶融した樹脂を射出することで、フィルムと一体化した成形パーツが得られる。有害性が議論される物質が一部に含まれるめっきや塗装と比べ地球環境に優しい防錆であるうえ、電波・光線透過性、100色を超えるカラーバリエーションなど自動車の技術トレンド「CASE」(接続・自動運転・シェアリング・電動化)に向けて有利な技術的特徴を有している。

環境に優しく、電波・光線を透過

また、透明多層フィルムは、耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂と、傷がつきにくいアクリル樹脂を積層させた機能性フィルムで、軽くて割れにくく、大型化や耐光性に優れ、ガラスよりも応用性がある。とくに自動車業界ではガソリン車から電気自動車(EV)、燃料電池車への転換によって、車の環境性能とデザインが大きく変わろうとしており、WATの技術・製品が脚光を浴びている。

代表取締役兼執行役員社長
島田 康太郎さん

製品の採用には勢いがついている。金属調加飾フィルムの北米のEV採用事例は、フォード「マスタング」のフロント透過エンブレム、リヴィアン・オートモーティブのピックアップトラック、スポーツ用多目的車(SUV)のスキッドプレート(車が地面と接触した時に下側の損傷を防ぐ耐摩耗性材料)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「キャデラック・リリック」のドアパネル内装パーツとエンブレムなど。また、多層フィルムは独フォルクスワーゲン(VW)がこのほど日本で販売を始めたSUVタイプのEV「ID.4」のヘッドアップディスプレー向けに40㎝角の大型透明多層フィルムを供給しており、ビッグネームがずらりと並ぶ。

世界でも数少ないこれらの技術を生み出す源は、人を大事にし、自由闊達で、やりがいのある社風だ。島田康太郎代表取締役兼執行役員社長は「当社の事業は答えがない中でやっており、“白地に絵を描く”ことが求められる。そこで大事にしているのは“メンバー一人ひとりがやりたいことと、当社がやりたいことがマッチできていること”だ。メンバーはどの方向に行くか、戦略を考えながら勉強やチャレンジを行い、夢を実現していってほしい」と話す。そのために島田社長は、半年に1回、メンバーにやりたいことを聞いている。考課は、1年でやるべきことを4項目くらい選んでもらい、「チャレンジできたか」「進めているか」「成果は出たか」を評価する。島田社長はメンバーに対し「失敗しても成功しても泣ける仕事をする」という思いで取り組むよう求めている。泣けるほどやったら、必ず次につながるからだ。こうしたトップの情熱から「立ち止まることは悪だ」というカルチャーが根付いている。

米GMに採用された金属調加飾フィルム。光が透過する
独VWのヘッドアップディスプレーに採用された透明多層フィルム

働きやすさ充実、全社員に教育支援

理系の新入社員はプロジェクトに最初から携わり、やりがいを感じてもらう。一方、語学系は技術メンバーとチームを構成し、プロジェクトをまとめる。語学力を活かして、先方と渡り合いながら成果を勝ち取っていく。制度上も、時間単位年休やフレックスタイム(コアタイムあり)、お子さんが小学校を卒業するまで利用できる育児短時間勤務制度、男性も育児休業が取得しやすい環境整備など充実している。また、テレワークがしやすいような環境を構築しているほか、全従業員を対象に公募型研修としてeラーニングを導入し、教育面での投資を行っている。

WATの2022年3月期は売上高46億7000万円、営業利益3億4500万円で、24年3月期には同59億円、同5億円を計画している。欧米での売り上げ増加を背景に、23年3月期は約11億円の設備投資を行っている。売上高100億円突破が視野に入ってきた。

理系出身の若手社員に聞く
やりたいことがやれる会社で、充実感がある

技術部
村重 達也さん(写真左)
中林 優也さん(写真右)
(2015年入社)

村重さん 工学院大学大学院化学応用学を修了して入社。車の内外装のフィルム開発で欧州案件を担当しています。ゼロハリバートンの旅行鞄のブロンズ色は私がつくりました。やりたいことをやらせてもらっています。風通しが良く、技術的な話を求められます。上長と相談すると、形になるのが早いです。

中林さん 東京電機大工学部を卒業して入社。車の内外装フィルム開発で北米案件を担当しています。北米案件は先行開発段階で話が来るようになり、リヴィアンには30色くらい持って単身、米国に行きました。任せてもらっているのでやりがいがあり、形になるのがうれしいです。

会社DATA
所在地 東京都中央区明石町8-1
設立 2010年4月1日
代表者 代表取締役兼執行役員社長 島田 康太郎
資本金 1億円
従業員数 118人
事業内容 合成樹脂、各種材料の加工・販売およびコンサルティング
URL http://www.wavelock-at.co.jp/recruit/

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