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理系の知識を活かす技術営業集団―創業90年以上、安定の経営基盤

理系・語学系×企業ジョブマッチング/愛知産業
記者の目/ここに注目
□金属3Dプリンタ、ロボットなど先端技術を手がける
□若手社員の技術教育に力

技術営業で顧客の悩みを解決

愛知産業は、海外の優れた産業機械を輸入して国内の製造業に販売する技術商社だ。単純に機械を売るだけでなく、システム提案からエンジニアリングまで行う。1927年に溶接の材料輸入から事業をスタートして以来、90年以上にわたり日本の製造業を支えており、現在は「金属加工に関する分野ほとんどを網羅し、製造業のお手伝いをする」(井上博貴社長)隠れたオンリーワン企業だ。

代表取締役社長
井上 博貴さん

日本の産業機械は、誰でも簡単に使えるよう標準化を図っていくのが一般的だが、海外の産業機械は日本より技術志向が強く“尖った機械”が多い。同社はその海外の産業機械メーカー70社以上とパートナーシップを締結している。一番古いパートナーは50年の付き合い。「現在の日本の産業機械では対応できない」「こだわりの製品で特殊な技術を必要とする」といったコアな要求に対し、スピード感を持ってソリューションを提供。商社でありながら、メーカー顔負けの総合エンジニアリング拠点を持つのも特徴だ。

同社のサービス提供の中核となるのが技術営業職だ。営業職というと、足を棒にして外回りをし、顧客対応に汗を流す姿を想像するが、同社の技術営業職はひと味違う。技術的な知見を活かしてクライアントの課題をヒアリング。解決策となる機械を求めて海外に出張し、値段や仕様を交渉する様は、営業にとどまらない仕事の幅があり、やりがいも大きい。井上博貴社長によると「お付き合いをする企業の担当者も理系出身の技術職の方が多いため、能弁なタイプよりも落ち着いて技術の話をしっかりできる技術営業職が好まれる」という。

愛知産業の全社員150名のうち、約40名が技術営業職だ。理系の出身者が多いが、文系の出身者もいる。技術営業職に必要な知見を備えさせるため、同社が用意しているのが「愛知産業アペレンティスシップ研修」と呼ぶ人材育成プログラムだ。技術営業部隊をまとめ上げる金安力専務は「海外メーカーの営業マンと接していて、若いのに技術的にものすごくしっかりした人材がいて驚いたことがある。その会社が導入していたのがドイツの技能伝承の仕組みであるアペレンティスシップの取り組みであり、それを当社に導入した」と経緯を語る。同研修の対象者は若手や中途入社の社員。愛知産業が持っている世界最先端の技術、金属加工技術(切削、研削、研磨、接合、積層造形など)をはじめ、技術を使いこなすノウハウやテクニックを座学と実習を交えて学んでいる。

営業も技術も一緒に技術を学ぶ愛知産業アペレンティスシップ研修
金属3Dプリンタなど先端のものづくりを手がけられる

技術営業職に必要な資質「好奇心」

技術営業職に必要な資質は何か。井上社長は「技術の興味があり、好奇心が強い人が良い」と語る。同社に持ち込まれる要望は、既存の製品・サービスで対応できない案件も多い。その要望をていねいにヒアリングし、新たな解決策を見つけるためには、さまざまな場所にアンテナを張り、自ら飛び込んでいく行動力も必要となる。

また、海外の機械を取り扱う関係上、海外出張や海外の方との打ち合わせの機会も多く、外国語ができることがベターだ。仕事では主に英語を使うため、同社では社員に「語学力手当」を支給し英語学習をバックアップしている。TOEIC(国際コミュニケーション英語能力)のテストで良好な結果を残すことが支給の条件だ。「最初から語学が堪能である必要はないが、入社後は英語を学ぶのも仕事のうち」と井上社長。「AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)など製造業の現場はどんどん変わっています。それをお手伝いするためには、機械だけでなくロボット操作やプログラミングの知識も必要です。さまざまなことに自ら挑戦し、マルチな才能を持つビジネスパーソンに育ってもらいたいですね」

企業のグローバル化が進み、理系と文系の垣根も低くなるなか、理系の知識にプラスして営業力や語学力を身につければ、ビジネスパーソンとして同年代に大きな差をつけられる。自らを成長させたいと考える若者に、同社は多くの成長機会を提供する。

品川の本社にはカフェのような喫茶スペースも

理系出身の若手社員に聞く
多くの裁量を与えられ、スキルを伸ばせる職場

先進システム課 係長 日比 裕基さん (2013年入社)
 大企業では一つの駒になってしまいますが、中小企業なら裁量を多く与えられ、自分のスキルを伸ばせる。そう考えて入社しました。現在は主に金属3Dプリンタの技術営業職をしています。単純にカタログを広げて商品を売るのではなく、当社では海外メーカーとの交渉やお客さまへの試作造形、据え付けからアフターフォローまで行います。当社の商品は海外メーカー製なのですが、お客さまからすると販売している我々がメーカーのように見られます。技術的な話をされ、頼りにされていると感じると、仕事の喜びを感じます。

私の担当は30社ほどで、その半分が自分で獲得した新規の得意先です。新規開拓は展示会などを通じて金属3Dプリンタに関心を持っていただいたお客さまにアプローチしています。飛び込み営業など体力勝負の新規開拓はほとんどありません。

最近はコロナ禍で出張が減っていますが、コロナ前は1年に3〜4回は海外に出張していました。海外が好きな人、グローバルビジネスに関心がある人、語学力を伸ばしたい人にとっては絶好の職場だと思います。

会社DATA
所在地 東京都品川区東大井2-6-8(本社)
設立 1937年9月11日(創業:1927年12月)
代表者 代表取締役社長 井上 博貴
資本金 8600万円
従業員数 150人(2021年12月現在)
事業内容 産業機械および工業材料の輸入、国内販売および技術サービスの提供、自動溶接、特殊溶接装置、自動化設備の設計開発、販売、製造、機械部品試験加工、受託加工、機械装置稼働監視システム販売
URL https://www.aichi-sangyo.co.jp/

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