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酒類市場の減少スピードは加速している…ビール各社に問われる利益構造の再構築

市場は縮小…高価格帯シフト
酒類市場の減少スピードは加速している…ビール各社に問われる利益構造の再構築

昨年のビール類市場は18年ぶりのプラスとなった

2022年のビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)市場は前年比2%増となり、04年以来、18年ぶりに前年を上回った。新型コロナウイルス感染拡大による行動制限解除などで業務用を中心に伸びたことで底を打ったが、大手4社の23年の見通しは前年比2―3%減と縮小を見込む。各社は酒税改正でビールが減税となることを受け、ビールにマーケティングを集中する戦略を打ち出している。(高屋優理)

22年のビール類市場は、業務用の回復などを受け前年比で増加となり、各社別ではキリンビールが同2%減、サッポロビールが同3%増、サントリーが同5%増、販売金額ベースのアサヒビールが同10%増となった。サッポロ、サントリー、アサヒの3社は業務用の回復で全体も伸びたが、コロナ禍の巣ごもり需要で伸びたキリンは反動減となった。

ビール類の中でもビールは、22年に同14%増となり、全体をけん引。各社別ではキリンが同4%増、サッポロが同10%増、サントリーが同26%増、アサヒが主力のスーパードライで同13%増と、各社大幅増となった。

ただ、キリンホールディングスの磯崎功典社長は、中長期的な見方では「酒類市場の減少のスピードはさらに加速している」と話す。18年ぶりのプラスとなったものの、基調が回復したのではなく、あくまで特殊要因による一時的な増減とみているようだ。

23年は大手4社とも、ビール類市場の減少を見込んでいるものの、10月に実施される酒税改正では、ビールの酒税が20年に続いてさらに7円下がり、第三のビールが9円上がって、発泡酒と同額になる。ビールと発泡酒、第三のビールの価格差はさらに縮小することから、ビール類の中でもビールは伸びるとみている。

キリンは「一番搾り」、サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」と主力のビールをリニューアル。サッポロは「エビス」で新ラインを立ち上げ、22年に「スーパードライ」をリニューアルしたアサヒは「アサヒ生ビール」の250ミリリットル缶を投入する。サントリーの鳥井信宏社長は「マーケティングをビールに集中する」と話す。

一方、発泡酒や第三のビールは増税などもあり、前年比で7―8%減と大きく減少する見込みだ。結果的にビールが伸びてもビール類全体ではマイナスになるとみられている。ただ、利益率の高いビールのシェアが増すことは、酒類各社にとって追い風ではある。高価格帯商品へのシフトなど、物価高と市場の縮小の中で、いかに利益構造を作れるかがカギを握りそうだ。

日刊工業新聞 2023年01月18日

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