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大日本印刷と豊田合成はなぜ異業種交流を続けるのか

大日本印刷と豊田合成はなぜ異業種交流を続けるのか

DNPと豊田合成の交流会。多様性向上や、挑戦する風土の形成を後押しする

異業種との交流により、ダイバーシティー(多様性)を推進―。大日本印刷(DNP)と豊田合成は、2021年から両社の従業員が交流する機会を定期的に設けている。異なる経験を持つ参加者同士が価値観を共有することで、各自の強みの認識や、挑戦意識の醸成を後押しする。「目には見えない効果が5―10年後に現れると期待」(豊田合成人事部人事室の見延俊郎グループリーダー)し、今後も取り組みを続ける考えだ。(狐塚真子)

DNPは社員に対する基本的な考え方を明確化した「人的資本ポリシー」を策定するなどし、人材への投資に力を注いでいる。一方、社内で実施した社員のエンゲージメント(愛着)調査では「挑戦する風土」や「達成感」の低さが課題として浮かび上がり、意識改革の必要性を感じていたという。

豊田合成でも20―30代の若手・中堅層の社員の働きがいや、挑戦への意欲向上が課題だった。社内公募で集まった社員との議論を行う中「他社との情報交換により、学びや気付きを得たい」という声が上がったことを受け、取引のあるDNPに取り組みを提案。21年に交流会が実現した。

初回は20代の若手を中心に両社から7人ずつが参加。オンラインでの開催となった。2回目となる22年9月の交流会では、各社から公募で集まった30代の社員計25人が参加。対面形式でワークショップ(参加型講習会)を行った。

内容は、働く上でのさまざまな価値観が書かれた「ワークバリューカード」の中から、自身が大切だと感じるカードを手元に5枚残すというもの。数人でグループを組み、「なぜこのカードを残したのか」を説明し合う。

参加者からは他者からの刺激を受けたという感想や、「人それぞれ価値観が異なり、補い合うことで相乗効果が得られるという考え方を広げることで、自由な発想も生まれやすくなり、会社としてより価値の高い製品やサービスの提供につながると気付いた」といった声も聞かれた。

両社は今後も定期的に取り組みを行っていく方針。DNP生活空間事業部総務部第1グループの後藤慶悟課長補佐は「繰り返し行うことで風土改革につながると考える。短時間勤務や出張が難しい社員でも参加できるよう、機会を創出したい」と話す。豊田合成も他社との交流を通じ、イノベーション創出に結び付けていきたい考えだ。

多様性向上の観点から、社内外での交流会を行いたいという企業のニーズは高まっている。社内イベントや研修サービスを提供するバヅクリ(東京都港区)は、20年8月にダイバーシティーをテーマとした研修の提供を開始。2年間で約50社、200回の提供実績があるという。

バヅクリでは、参加者同士の価値観の違いを知るためのワークショップと、交流を促すためのコミュニケーション施策を同研修内で実施する。「実際に参加者の意識・行動変容が生まれたのか、振り返りの研修を実施することも企業に推奨している」(佐藤太一バヅクリ社長)。参加者へ定期的にフォローアップを行うことが、交流会の効果を高めるカギとなりそうだ。

日刊工業新聞 2023年01月16日

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