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スタートアップ急成長、「昆虫食」の消費者認知が広がってきた!

スタートアップ急成長、「昆虫食」の消費者認知が広がってきた!

学校給食にも初採用。徳島県立小松島西高校では食物科の生徒がメニューを考案したコロッケが提供された。「香ばしくて美味しい」との声も(11月28日)

人口増加に伴う食糧危機を救う代替タンパク源として注目される昆虫食。社会の関心の高まりを追い風に、食用コオロギを手がけるスタートアップ、グリラス(徳島県鳴門市)が急成長を遂げている。粉末やエキスを食品メーカーなどに供給するビジネスモデルに加え、独自の食品ブランドも展開。2022年夏には初の小売店向け商品として菓子などを市場投入した。供給手法や商品の多様化に伴い、目下の課題は生産増強。23年度内には徳島県内に新たな拠点を稼働予定だ。(編集委員・神崎明子)

給食では粉末状の食用コオロギをひき肉の代わりに練り込んだ

グリラスは、昆虫食の中でも特に食用コオロギの可能性に着目し、19年に設立された徳島大学発スタートアップ。美馬市内にあった廃校などを活用しコオロギの養殖から品種改良、原料加工、商品化まで一貫して手がける。

一般消費者に広く認知されるきっかけとなったのは「無印良品」を展開する良品計画と協業し、20年に発売された「コオロギせんべい」。エビのような香ばしい風味が受け入れられ、市場拡大の弾みとなった。粉末状に加工されたコオロギは菓子や麺類、パンなどに用いられ、商談企業は500社近くに上る。一部航空会社では国際線の機内食でもコオロギ粉末を使った料理が提供されている。

新設する生産拠点はこうした需要増に対応するもので、同社にとって3番目となる。これにより現在、年間6トンほどのコオロギ粉末の生産能力は同50トンほどに引き上げられる見通しだ。将来は外部への生産委託も検討する。

順調にみえる事業展開だが、同社によると「目指す未来のまだ途上にある」という。コオロギが「日常的な食の選択肢になる」ためには、環境負荷の低減効果や栄養価の高さといった利点で訴求するだけでなく「味や扱い方といった魅力発信がますます重要になる」と考えるからだ。21年にはコオロギの品種改良を目的にした研究所を開設したほか、老舗日本料理店との連携を通じてレシピ考案も進める背景にはこうした狙いがある。

食の課題を先進技術で解決する「フードテック」をめぐっては国内外の企業の参入増で市場拡大が見込まれる。これまでの知見を生かしたビジネスモデルで活況を呈する市場において、同社がどんな差別化策を見いだすか注目される。

日刊工業新聞 2022年12月09日

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