VRの第一人者を引き抜いたアップル、今度は自動車プロジェクトリーダーが退社へ

3Dユーザーインターフェースの自動車応用も想定か

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Doug Bowman氏(バージニアテックのサイトから)とSteve Zadesky氏(LinkedInから)
 米アップルがバーチャルリアリティー(VR)について米国でもトップクラスの研究者をスカウトし、VR市場への参入に向けて本格的に動き出したことがFTの報道で明らかになった。ライバル企業がVRヘッドセットなどの商品化に次々に乗り出す中、それらを追撃するものとみられる。一方で、同社が極秘に進める電気自動車(EV)プロジェクトでは、プロジェクトを監督するリーダー人材が退社することになったとWSJが伝えた。

 アップルが新たに採用したのは、バージニア工科大学(バージニアテック)でコンピューター科学を専攻していたダグ・ボウマン(Doug Bowman)教授。人間コンピューターインタラクションセンターの所長も兼務し、3DユーザーインターフェースやVR研究について米国での第一人者という。2014年にはIEEE(米電気電子技術者協会)のVRテクニカルアチーブメント賞を受賞している。

 VRヘッドセットをめぐっては、フェイスブック傘下のオキュラス、グーグル、マイクロソフト、サムスン電子、ソニーなどが率先して商品化を進めている。それに対し、アップルはVR/AR(拡張現実)関連のエンジニアの採用や特許出願を行っているものの、事業化では大きく出遅れている。

 ゴールドマン・サックスの予測によれば、VR関連は2025年までに800億ドル(約9兆4000億円)の市場に成長する見通しで、エンターテインメントから教育、旅行、エンジニアリングなどさまざまな用途が想定されるという。

 そうした中でアップルは、AR(拡張現実)/VR関連スタートアップの買収にも力を入れている。今月に入って、顔の表情から感情を読み取る技術を持つエモティエント(Emotient)の買収が明らかになり、昨年11月には映画「スター・ウォーズ」にリアルタイムモーションキャプチャーの技術が採用されたフェイスシフト(Faceshift)を、昨年初めにはARソフトのメタイオ(Metaio)を買収している。マイクロソフト「キネクト」のジェスチャー入力技術を開発したプライムセンス(PrimeSense)なども買収済みだ。

 さらに、FTではアナリストの話として、ボウマン氏の知識と経験がアップルの自動車プロジェクトに応用される可能性も指摘している。

 米ラスベガスで先日開かれた「CES」でも、アウディやBMWといった自動車メーカーがジェスチャーで画面操作ができる3Dユーザーインターフェースを参考出展し、脚光を浴びた。FTでは、自動車分野も含め3Dインターフェースの発展の余地があることが、ボウマン氏のような人材を確保したもう一つの理由かもしれないとしている。

 <次のページは「2019年というEV開発目標のプレッシャーが退社の理由か」>

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藤元正
モノづくり日本会議実行委員会
委員長

アップルは中国、イスラエル、英国ケンブリッジ、横浜などに研究開発拠点を設置済みあるいは設置を計画し、グローバルでの研究開発活動を加速している。今週に入り、カナダ・オタワ郊外へのR&Dセンターの進出計画が表面化したが、近くにBlackBerry子会社で自動車ソフトを手がけるQNXソフトウエア・システムズがあることから、アップルの自動車ソフトの開発拠点ではとの憶測まで飛び交った。いずれにしても、国籍に限らず、優秀な人材の採用が将来に向けた技術開発の鍵となるのは間違いない。

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