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地方国立大の定員増、中四国3大学の決め手は?

文部科学省は地方国立大の定員増を、2023年度に3大学で認める。材料エネルギー学部を新設する島根大学、高度産業デジタル変革(DX)人材を育成する広島大学、医学×光・工学の徳島大学で、計120人の純増だ。地方創生に向けた自治体や地域産業との連携が重視され、ヒアリング審査に知事が登壇するなど、実績と期待の高いプランが選ばれた。

島根は県内大学が国公立二つで、たたら製鉄の伝統から材料関連の企業が多い。島根大はエネルギー問題に、計算機科学と掛け合わせた材料科学で迫る学部を、入学定員80人(定員増40人、学内措置40人)で新設する。

広島大は情報科学部同学科に知能科学プログラムを新設し、データサイエンスなどの産業DX人材を育成する。定員増50人に、学内措置20人だ。周辺大学におけるIT人材育成とすみ分ける。

徳島は理工系学部を持つ県内大学は徳島大のみ。青色発光ダイオード(LED)など光関連と医学による医療機器開発人材などを育成する。理工学部同学科の定員増30人(25年度以降に学内措置で定員減15人)だ。

今回の措置は政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針」による1都3県以外での特例だ。21年は準備期間が短く申請2大学は選定されなかった。今回は5大学が申請した。選定に伴う予算はなく学生納付金増のみだ。運営費交付金の組織改革支援枠などを検討することになりそうだ。

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日刊工業新聞2022年6月16日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
公募では「定員増の必要性」(特例として認めるだけの意味があるのか)や「緊密な地域連携」(地域連携プラットフォームの活用など)といった「5項目」が求められている。各大学が「ハードルが高い」と感じるのはそのためだが、選定の3案件はいずれも全項目をクリアしているという。地域連携にしても「協議会をつくって年1回、顔を合わせていますよ」のレベルでは難しい。知事をヒアリング審査に引っぱり出せるほどの緊密性は、なるほど今回の選定で大きなアドバンテージになるなと感じた。

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