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競争率5倍、多くの大学の関心が向かう内閣府「地域中核イノベ事業」の魅力

内閣府の2022年度新事業「地域中核大学イノベーション創出環境強化事業」が、応募数50弱、競争率約5倍になることがわかった。自治体・地域産業との連携で、1大学年1億円程度の支援で使途自由な交付金なのが魅力だ。大学10兆円ファンドの国際卓越研究大学が数大学限定なのに対し、多くの大学の関心が「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」へ向かう様子を裏付けるものとして注目される。

5月末に締め切られた同事業は自治体や、文部科学省・同省所管法人を除く政府事業、例えば「スタートアップ・エコシステム拠点都市」などに参画する約10の国立・私立大学を2年間、支援する。自治体などが設置者の公立大学は対象外だ。各省の予算事業に上乗せする、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)が使われた。

公募期間は約1カ月にも関わらず予想以上の応募で、私立大が約2割を占めた。政府の「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」の一翼を担う―という認識が注目された一因のようだ。

同事業は、寄付や産業界資金の獲得に注力する国立大向けの「国立大学イノベーション創出環境強化事業」からの転換だ。物品費や人件費など制限がない交付金で「地域の大学の頑張りに対する報奨金」(内閣府大学改革・ファンド担当室)といえる。

申請書では大学のビジョンや戦略、専門人材雇用など地域連携の体制整備を含む計画、波及効果など大枠の記述が求められた。公募要領の細かな条件に“はめ込む”書類作りになれた大学には戸惑いもあった。

しかし国が示す大きな方向性に向けて、改革の手段は自由―という形は、指定国立大学や国際卓越研究大学で進んできた方式だ。今回は研究大学以外でも“補助金慣れ”した体質を転換する機会となりそうだ。採択は9月頃と予定されている。

日刊工業新聞2022年6月9日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「国際卓越研究大学? そんなの関心ないですよ。それよりも…」という大学トップの発言をしばしば耳にする。大半の大学にとっては、国際卓越研究大と対をなすものとして政府が強調する施策「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」ががぜん、重要だからだ。地域振興パッケージは「小さい既存事業の寄せ集めでは?」との声もあるが、本記事の地域大学イノベ事業は、新規で競争率5倍という状況に注目したい。次の注目は、来年度予算でどのような新規事業が出てくるか、だ。

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