不参加のアマゾンがCESで存在感、音声アシスタントを他社に相次ぎ提供

フォードなどと連携、車やスマートホームに用途広がる

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アマゾンの音声アシスタントと連携するフォードの「SYNC 3」(フォード提供)
 米ラスベガスで開催された「CES 2016」に出展していないにもかかわらず、パートナー企業の製品やサービスを通して存在感を発揮したのが、ネット通販最大手のアマゾンだろう。その秘密は、クラウドベースの家庭用音声アシスタント端末「アマゾン・エコー(Amazon Echo)」と、その中核ソフトウエア「アレクサ(Alexa)」にある。

 会場では、とくにスマートホーム関連で、アレクサやエコーとの連動を謳ったサードパーティー機器の出展が目立ったほか、フォード・モーターもコネクテッド・カー(つながる車)実用化の一環として、アマゾンとの提携を発表。自動車の状態や運転状況を音声で確認したり、車にいながら、自宅のスマートホーム用のIoT(モノのインターネット)デバイスを音声で操作できるインターフェースとして採用するという。

 アレクサはもともと、アマゾン・エコーに組み込まれたソフト。円筒型スピーカーの格好をしたエコーは、Wi-Fi/ブルートゥース経由でネット接続し、音声での受け答えや品物のネット注文などができる。米国では2014年11月に試験販売が始まり、2015年6月に一般発売された。

 アマゾンの狙いは、こうしたエコーの単体販売やスマートフォンとの連携にとどまらない。さまざまな機器やサービスに組み込む音声インターフェースとして、アレクサの機能のサードパーティー展開を強く打ち出している。理由はいたって簡単。アマゾンと消費者の接点がそれだけ増えれば、商品のネット注文の増加が期待できるためだ。サードパーティー側でも、自ら巨額の費用を投じてソフトを開発せずに、高いレベルの音声インターフェースを活用できる利点がある。

 こうしたことから、アマゾンでは1億ドルを拠出して「アレクサ・ファンド」を作り、ほかの会社が自社の機器にアレクサのソフトを導入する取り組みを資金面で支援する仕組みも整えた。

 5日にフォードが発表した内容によれば、同社の第3世代の車載情報システム「SYNC(シンク)3」と、アマゾンのエコーおよびアレクサを連携させるという。車内からエコーに接続し、自宅の照明や、室温を調整するサーモスタット、セキュリティーシステム、ガレージドアなどを音声で操作したり、これらの機器の状態も確認できるようにする。

 その逆も可能だ。自宅にいる場合はエコーを、車内ではアレクサの機能を使って、自動車の情報も音声でやり取りできる。例えば、エンジンの起動/停止、ドアのロック/アンロックといった操作から、燃料の残量や走行可能距離、現在の走行場所と自宅までの距離/時間などの情報提供を、自然な言い回しで行えるという。もちろん、天気予報を聞いたり、音楽の再生、商品のネット注文も音声で指示できる。サービスの開始時期は今年後半になる予定だ。

 一方、サードパーティーとして、アレクサを導入しする機器をCESで発表したのが、フランスのスタートアップ企業、インボクシア(Invoxia)。ブルートゥース接続のスピーカー機器「トリビィ(Triby)」で、家族向けの情報ハブといった位置づけ。裏側の磁石で冷蔵庫に取り付け、キッチンでの利用を想定している。価格は199ドル。

 現在のトリビィは、インターネット通話で受けた電話をスピーカーフォンで話したり、ラジオを聞いたり、外出先から送られたメッセージや絵を表示したりできるが、スマートフォンアプリか本体のボタンでしか操作できない。それをアレクサファンドの資金支援を受けて、音声でも操作できるように改良する。今春にもソフトをアレクサ対応にアップデートの予定。さらにインボクシアでは、子供が間違ってネットでの商品注文をしないよう、家族の声を区別する機能も開発中という。

 コイン大の大きさの無線デバイスを自分のかばんや財布、鍵といった大事な持ち物に取り付け、なくさないようにしておけるのがトラッカー・ブラボー(TrackR Bravo)」。スタートアップの米トラッカー(TrackR)が1個29ドルで販売している。屋内で場所を特定するWi-Fi対応の電気プラグ「アトラス(Atlas)」は39ドルだ。

 ブラボーは、物をどこに置いたか分からなくなった場合、スマホのアプリを操作し、音を出して探しやすくする仕組み。ブラボーから逆にスマホも見つけられる。外出先などで紛失した場合は、ほかのbravoユーザーのスマホが紛失物の100フィート(約30m)以内に近づくと検知し、持ち主のスマホの地図上に表示してくれる機能もある。アマゾンのエコー/アレクサと連携することで、音声を使って探し物を突き止められるという。

 このほか、住宅向け防犯システム会社の米ビビント(Vivint)も、アマゾン・エコーを通じて、ドアロックや防犯システムの入り切り、照明、サーモスタット、ガレージドアなどを操作できるようにするとCESで発表した。

 スマートホームや住宅向けIoTをめぐっては、アップルやグーグル、サムスンといったIT大手も狙いを定め、基盤となるプラットフォーム技術や仕様を開発したりしている。アマゾンのアプローチが他社と大きく違うのは、スマートホームのエコシステム全体の覇権を目的としていない点。突き詰めれば、物販のための音声アシスタントにすぎない。そのため、音声アシスタント機能を機器に導入したいメーカーとしては、アマゾンの方が、プラットフォーム争いの動向を気にせずに気軽に組みやすい、という見方もある。

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藤元正
モノづくり日本会議実行委員会
委員長

『ロングテール』や『フリー』『メイカーズ』など、デジタル技術による経済・社会のパラダイム変化を鋭く分析した著作で知られる、元ワイアード誌編集長のクリス・アンダーソン氏。昨年秋に来日した際には、「アマゾンのエコーが大化けする」と予言していた。日本ではそもそも販売していないので、ピンとこなかったが、米国では、スマートホームの流れに乗じて急速に広がっていきそうな気配だ。スマートフォンでは大コケしたアマゾンだが、音声アシスタントはいわば個々の消費者の手元に買い物ボタンを置いてもらうようなものであり、非常にスマートな戦略といえる。

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