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芝浦工大が示した、研究力×ダイバーシティーの相乗効果

芝浦工業大学は近年の研究力強化で、教員のダイバーシティーが効いていることを明らかにした。女性比率19%、外国人比率14%の中で、同大の被引用数トップ10%論文の上位8人中5人が女性か外国人だった。有力論文誌への投稿費支援などが後押しになった。研究力とダイバーシティーの関係性の明示に、注目が集まりそうだ。

芝浦工大は文部科学省のスーパーグローバル大学(SGU)創成支援事業へ2014年に採択された。従来の男女共同参画に加え、国際化で重要なダイバーシティー推進に着手した。

一方、16年には研究ビジョンを策定。最先端の設備・施設の拡充や、論文数値を使った研究力強化に取り組んだ。この結果、研究者1人当たりの論文数が増加。工学、材料科学など主要4分野で、20年の論文数は16年比で2倍になった。一要因にダイバーシティーがあると分析した。

16―20年の論文被引用数をみると、教員307人中の上位8人で総被引用数の3割弱を稼ぐ。うち5人が女性・外国人で、工学のほか宇宙や環境など分野も多様性が高い。

また論文投稿費を支援する学内施策の利用は、女性・外国人が46%と顕著だった。国際標準を意識する外国人は一流論文誌の掲載を重視し、そこでの論文のオープンアクセス化により被引用数増になったとみられる。

同大の教員の女性比率は13年度に8・8%だったが、21年度で19%になった。また、国の科学研究費助成事業(科研費)採択件数における女性比率は約24%で、在籍比率の19%を上回っている。

日刊工業新聞2022年4月14日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
理工系大学は女性研究者が少ないため、男女共同参画の活動も一部になりがち。しかし芝浦工大は早くから、村上雅人前学長が熱心で注目していた。近年はダイバーシティーの切り口から、女性に加え外国人教員の支援が加わり、同大のデータもこれらが入り交じっているが、いずれにせよマイノリティーの頑張りが大きいことが見て取れる。「マイノリティーはマジョリティーに比べて、様々な障壁を乗り越えての存在だから、相対的に優秀なのはある面、当然だろう」と思っていたが、数字で示せると説得力がある。他大学にもこういったデータをどんどん出してもらいたい。

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