ベンチャーも創業した東京理科大・新学長に聞く、図抜けた経験と知識の活用法

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理工系の研究は課題解決型が定番だが、東京理科大学に元日付で就任した石川正俊学長は「こんなモノやサービスがあればおもしろい、という着想から始まる“まだ見ぬ価値の創造”を」と力説する。2000年代に東京大学の役員で産学連携を開拓、大学発ベンチャー(VB)も自ら創業した。ずぬけた経験と知識を、私学随一の理工系総合大学に活用する策を聞いた。

―2021年に140周年と伝統ある私立大学トップに、学外から就任しました。
 「実力ある大学だと気になっていたが、想像以上にしっかりとした組織体で、仕組みもよく考えられている。23年度からの創域理工学部など再編や教育プログラムでそう感じる。国立大学と異なり社会の急変に対応できる強さ、理工系でまとまって大胆に変わる柔軟性がある」

―デジタル変革(DX)や人工知能(AI)など、理工系人材に追い風です。
 「デジタルやセキュリティーなどの技術、システムデザインのセンスを持つ人材の価値が急上昇している。新分野へ飛び出ていくための教育も必要だ。隣の分野に“跳べる”よう、幅広い専門基礎や各学年に適した教養を用意している」

―提唱する「あったらいいな」型の科学技術とは、どんなものでしょう。
「米グーグルはまず『世界中を検索する』という発想を示し、社会が反応した。『社会が求めている』となったことを実現するため、多様な技術や人材を周辺から集めた」

「研究成果は従来、『課題解決にこの技術が必要だ』と紹介された。対して『役立つかわからないがユニークで、社会からこんな反応が出ている』と実例を添えて示す形が、より重要になっている。両タイプ、また両面を併せ持つ研究者・技術者を輩出したい」

―7学部30数学科、学部1学年約4000人もの規模です。
 「そう感じられないのは専門的で真面目な理工系人材を、米国などと異なり、日本社会が評価できていないのが一因だ。また約110社の理科大発VB数も、企業との共同研究数ももっと増やせると確信している」

いしかわ・まさとし 79年(昭54)東大院工学系研究科修士課程修了、同年通産省工技院(現産総研)研究員。89年東大助教授、99年教授、02年総長特任補佐、04年副学長、05年理事兼任。09年エクスビジョン創業。20年特任教授。工学博士。茨城県出身、67歳。

記者の目/「変化に柔軟な組織」期待

東大がVB輩出の体質に変わる土台を構築し、国の工学教育改革の議論も先導。情報理工学を専門に、銀行や保険など多様な産業界と接した。「変えることに柔軟な組織」(石川学長)の東京理科大に来たのはその上でのこと。最適の組み合わせだと実証してくれる日が待ち遠しい。(編集委員・山本佳世子)

日刊工業新聞2022年2月17日

COMMENT

山本佳世子
編集局科学技術部
論説委員兼編集委員

東京理科大の理事長は学内出身者で、学長は東大の元大物教授・役員というケースが多い。「そういう決まりがある」という公式のコメントは得られていないものの、前学長は松本洋一郎元東大理事だし、前々学長は光触媒でノーベル賞候補でもある藤嶋昭元東大教授だ。歴史的には、旧東京帝国大学理学部仏語物理学科の卒業生ら21人によって、「東京物理学講習所」が創立されたのが東京理科大のスタートだから、深い関わりといえる。なおインタビュー時点で、「その組織に入ってまだ1カ月」という大学長は珍しい。もっとも独法などではよくある形でもあり、トップと組織の双方にとっての新鮮さが、新たな面を切り拓くことだろう。

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東京理科大

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