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新たに発足する研究機関の連合体「IU-REAL」にかかる期待

四つの大学共同利用機関法人と総合研究大学院大学は、3月に「大学共同利用研究教育アライアンス」(IU―REAL、アイユーリアル)を設立する。2022年度からの第4期中期目標・中期計画に向け、準備していた一般社団法人による連合体を整備する。異分野融合を含む研究力向上、大学院教育の充実、業務の効率化を手がける。日本の研究力強化が議論される中で、国公私立大学の研究支援の役割もより強くなりそうだ。

一般社団法人のIU―REALに情報・システム研究機構、高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構、人間文化研究機構と総研大が、社員として参画する。複数大学が強い連携をする「大学等連携推進法人」と似た形だ。初代の代表理事に高エネ機構の山内正則機構長が就く。

4機構の傘下には国立情報学研究所や国立天文台など計17機関がある。期待の一つは人文・社会科学系も含む異分野連携だ。

また従来は各機関の学問分野別の研究者・学術コミュニティー支援の色が強かったが、幅広い大学との連携を強化する。1例は研究関連データを分析するインスティテューショナル・リサーチ(IR)だ。分野によらないデータサイエンスも新研究手法の柱だ。

博士人材育成では、総研大に所属する学生を各研究機関が指導している。ここに大学共同利用機関と総研大の「特別研究員制度」を新設。博士後期課程3年間の経済支援と、優秀な博士課程修了者に対する2年間の研究員雇用により、若手研究者育成を後押しする。

業務の効率化は、情報セキュリティーや知的財産などの合同研修を試行済み。今後、広報などに広げていく。

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日刊工業新聞2022年2月18日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
日本の科学技術力向上に向けては、大学共同利用機関法人の力をもっと活用すべきだと、文科省の担当部署が口にしているし、私もそう思っている。これまで各学術分野の研究者(学会などの学術コミュニティー)間でもっぱら頼りにされてきたが、アライアンスでは「研究を含む大学改革、とくに研究費不足が悩ましい国立大」の支援を重視していくという。各分野の研究支援ではなく、研究IRやDSとなれば各大学の執行部としての関心が向き、これまでと違った関係性が築けるのではないかと期待している。

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