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STEAM教育は「面白い」から入っていこう

科学、技術、工学、芸術、数学を総合的に学ぶSTEAM(スティーム)教育が注目されている。以前からの理数教育のSTEM(ステム)に近年、Aが加わった。このAは幅広い教養としてのリベラルアーツだったり、芸術のアートだったり。決まってない点が、かえっていい。

STEAMは小中高の児童・生徒が身近な事柄に関心を持ち、教科・科目を超えて知識を総動員し、科学的な探求を行う活動だ。自然科学系の研究と重なる点が多いが、人文・社会科学系の多様な知識を組み合わせるリベラルアーツが入る。これによって、複雑で多様化した社会に向き合う高度な人材育成につながるとされている。

一方「Aは絵、工作や音楽、ダンスなど何でもよい。子どもたちは好きなことから入って行く中で、数学や科学がある形がいい」というのは東京理科大学理数教育研究センター長の秋山仁さん。葛飾北斎の浮世絵に隠された幾何学、和音と波形、ホームランに結びつくサイクロイド曲線などあらゆるものに科学が入っているからだ。

秋山さんは自ら証明した定理を使い、正四面体を適当に切り開いた展開図を、タイルのように平面に敷き詰める演習を手がけている。生徒は定理を学びつつ実際に手を動かし、各色同形の展開図を組み合わせた美術作品を作り出す。

さらに創作の意図を文章で表現し、皆の前で発表する。イメージを元に簡単な作曲をすることもあるという。これなら数学に苦手意識がある生徒でも、別の面白さから取り組めるわけだ。「大切なのは創造性に加えて感情や想像、コミュニケーションなどの力だ」と秋山さん。人工知能(AI)にはまねできない、一人ひとりの魅力を育てていこう。

日刊工業新聞2022年1月31日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
秋山先生は数学者なので、「Aに何を入れてもいい。あらゆるものに数学が関係しているのだから」という姿勢だが、化学を学んだ私としては「あらゆるものに化学が関係しているでしょ」といいたいところだし、「生物が絡まない世界はあり得ませんよ。考える主体の人間そのものが生物ですし」という研究者もいるだろう。ここへ来て人気急上昇のデータサイエンスも、「すべてのことがデータで裏付けられる」と強調されている。一方でAは個人の捉え方次第のもの。新型コロナで「不要不急」のものとされたし、人によって好き嫌いも、価値の置き方も割れる。その両方を掛け合わせてSTEAM教育が進む、という組み合わせの妙に感心した。

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