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地方大学が強み“相乗り”、本格化する「連携推進法人」

地方大学が強み“相乗り”、本格化する「連携推進法人」

四国5国立大の連携会見。教員養成課程におけるジレンマに一手を打つ(鳴門教育大提供)

国公私立大学で踏み込んだ協力が可能な「大学等連携推進法人」が本格化してきた。山梨大学・山梨県立大学の「大学アライアンスやまなし」に続き、5国立大学による「四国地域大学ネットワーク機構」が文部科学相の認定を狙う。魅力は単位互換制度より容易に、相手大学の強みを活用できる“相乗り科目”だ。地方大学が思案する時の具体的なポイントを、2事例から見ていく。(編集委員・山本佳世子)

山梨・コロナ対応など壁越える

「地域の国立大で重要なのは、県と強い関係を築いて課題に立ち向かうことだ。新型コロナウイルス感染症対応ではさらに、県立大と連携法人でまとまっていたのが効いた」。こう強調するのは、山梨大の島田真路学長だ。国の新型コロナの方針は厚生労働省から県を通じて保健所と県立大に指示が来るが、国立大はこのルートに乗らず動きにくい面がある。しかし今回は山梨大の医学部、山梨県大の看護学部、会場となった各キャンパスなど連動し、壁を乗り越えたという。

もっとも連携の核となるのは教育で、連携法人で可能となる「連携開設科目」が目玉。両大学は学部構成も違い、「多様な考えに学生が気付く機会を、大規模総合大学のように提供できる」と風間ふたば山梨大理事・副学長は説明する。さらに大学院生指導や教員の共同研究など、「現場でメリットを感じる部分から伸びていく」(風間理事)ことを期待する。

四国・教員養成課程で科目共有

一方、多くの国立大の教員養成課程におけるジレンマに一手を打つのは、四国の香川大学、徳島大学、愛媛大学、高知大学と鳴門教育大学によるネットワークだ。小中高など学校教育の課題多様化と、教員需要の全国的な減少傾向の中で、学生が教員免許を取得するための科目の一部共有を進める。

鳴門教育大の山下一夫学長は「教員養成は県の教育委員会と密接な案件で、伝統も方針もそれぞれだ。しかし連携法人なら統合と異なりハードルが低く、現実的だ」とアピールする。

具体的には美術や体育などの教科の専門の学びで、1大学には難しい著名な芸術家やアスリートを客員教授で招いたり、集合型の実技の合同授業を行ったりする計画だ。「教員養成といったら四国だ、との評判を高めたい」(佐古秀一鳴門教育大理事)と夢は広がる。とはいえ四国は山に阻まれ、各県間の移動も時間がかかる。そのため「中学の美術を3大学連携で」(同)などできるところから着手。手当などで後押ししていく方針だ。

2事例ともカギは教育の質の向上が、教育学部の教授ら現場の負担感を上回るかどうかだ。また一般に連携は、熱意ある教職員が担当をはずれると下火になりやすい。しかし今回は、文部科学相認定の法人という強さがある。以前からの共同調達などの取り組み拡大、新たな経営合理化案、私立大学の参加などの可能性も、今後は注目されそうだ。

日刊工業新聞2022年1月11日

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