テスラモーターズのマスク氏ら、AI研究のNPOに10億ドル寄付

人間の能力を拡張するためのAI研究を支援

 米テスラモーターズCEOのイーロン・マスク氏はじめ、シリコンバレーの著名なIT起業家・投資家、それに企業が人工知能(AI)研究を行うNPOに合計10億ドル(約1200億円)もの資金を寄付すると11日発表した。マスク氏はAIが将来「人類存続の脅威になる」と再三警告を発しているAI脅威論者の一人だが、この「オープンAI(OpenAI)」というNPOでは、目先の利益よりも人類社会の発展を目的に、人間の能力拡張につながるAI研究に主眼を置くという。

 オープンAIのブログによれば、「経済的利益の追求に縛られることなく、人類全体の利益になるようデジタル知能の進展を目指す」「ノンプロフィットとして、株主ではなく、すべての人々のための価値を作るのが目的」とAI研究についての公的な役割を強調。同NPOに所属する研究者は研究内容を論文やブログ、プログラム(コード)、あるいは特許の形で公開し、世界中の研究者と共有する。ほかの研究機関や企業との共同研究も進めるという。

 オープンAIの共同会長にはマスク氏と、スタートアップを支援するシードアクセラレーターとして有名なYコンビネーター社長のサム・アルトマン氏が就く。

 出資については、この2人のほか、ペイパルの共同創業者で『ゼロ・トゥ・ワン』の著者として日本でも知られる投資家のピーター・ティール氏、リンクトイン共同創業者のレイド・ホフマン氏、Yコンビネーターのパートナーのジェシカ・リビングストン氏らが表明。企業ではアマゾンウェブサービス(AWS)やインドのIT大手インフォシス、Yコンビネーターの研究部門であるYCリサーチが資金支援する。

 こうした活動はAI研究者の関心も集め始めているようで、イリヤ・サツケバー氏はグーグルのディープラーニング部門を辞めてオープンAIの研究責任者に就任した。

 一方、10億ドルという資金は巨額だが、オープンAIはブログで「この先数年間はそのほんの一部分しか使わない見通しだ」としている。しかし、スタンフォード大学講師のノーマン・ウィナースキー氏はロイターに対し、「長期にわたって使える資金であり、10億ドルは莫大なインパクトがある」とその効果に期待を示す。

 ウィナースキー氏はアップルの音声アシスタント「Siri(シリ)」を開発したスタートアップ(Siri, Inc.)の共同創業者でもある。2010年にアップルが音声アプリを提供していたSiri社を買収し、iPhoneのiOSに組み込む形で2011年10月にサービスを開始した。SiriはもともとDARPA(国防総省高等研究計画局)の研究開発プログラムをベースにしていて、そのプログラムには5年間で1億5000万ドルの政府資金が投じられたという。

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藤元 正

藤元 正
12月13日
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フェイスブックやグーグル、IBMが虎の子とも言えるAI関連ソフトウエアについて、相次ぎオープンソース化に踏み切っている。優秀な人材発掘のほか、自分たちでは思いもよらないアイデアやアプリケーションについて、社会の知恵を借りようという狙いだ。こうしたIT大手の活動と、中長期で社会の役にたつAI技術を開発するオープンAIの目指すところは必ずしも同じではないが、オープンという方向性では重なる部分がある。米国では民間企業、政府、大学・研究機関だけでなく、オープンという切り口でノンプロフィット、あるいは独立系エンジニアを巻き込みながら、AI研究が新しい段階に入ろうとしている。

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