高校の「情報」必修化で女子生徒の理工系学部の進学増が期待できるワケ
高校における「情報」教科が様変わりする。2022年度からプログラミングを含む科目が必修となり、議論は入試対応に進んでいる。課題は多いが、デジタル時代を生きていく上で必須の学びだと覚悟して、社会一丸となってよりよい仕組みを整えていくべきだ。
高校の情報教科はこれまで、社会科学的な「情報と社会」を教える高校が8割で、プログラミングを含む「情報の科学」は2割にすぎなかった。背景には情報の教員免許を保つ専任の教諭が、全国約5000校のうち2割にしかいないことがある。多くの高校で、他科目を専門とする“掛け持ち教員”が担当していたのだ。
それが来春の高校1年生から適用となる新学習指導要領で、「情報Ⅰ」が必履修科目となり、中身は8割が情報科学という大変化を迎える。さらに本格的な学びとなるかを左右するのが、大学入試における科目設定だ。大学入学共通テストでは、対象世代が受験する年以降の導入が今夏、決定した。
現在は2次試験にあたる各大学の個別学力試験に、どのように取り入れるかが議論されている。例えば理工系学部に多い「物理・化学の2科目必修」が、「物理・化学・情報から2科目選択」に変わることが考えられる。そうなると高校で物理を敬遠する傾向のある女子生徒の、理工系学部への進学増が期待できるという。
一足先に動きだした、教科書を離れて社会の課題解決などに取り組む「総合的な探求の時間」との連動も魅力的だ。電気通信大学の中山泰一教授は「1年生で情報Ⅰを学び、2、3年生で探求学習やクラブ活動で関心を深め、高大接続や総合型選抜入試につなげる形もあるだろう」と、大学が多様な学生を迎える上での相乗効果に期待する。
専門教諭の配置が都道府県で大きく異なる高校や、受験生減を心配する大学からは後ろ向きの声も上がる。しかし情報はもはや、すべての若者が進路を問わず身に付けるべき素養と認識されている。前向きに取り組む意識を社会全体が持ちたい。