2050年の社会はどのような姿になっているのか、 グリーンとデジタルがつくり出す未来とは

東京大学大学院情報学環教授・越塚登氏インタビュー

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東京大学大学院情報学環教授・越塚登氏

「Green(グリーン)」と「Digital(デジタル)」は2021年を生きる私たちにとって無視できないキーワードになっている。企業にとってもこの2つを自社の戦略にどのように位置づけ、未来を構想するかは喫緊の課題だ。グリーン社会実現への道筋をどのようにつけるべきか。IoTやオープンデータに詳しい東京大学大学院情報学環教授の越塚登氏に社会の未来像を聞いた。

―米国がカーボンニュートラルに舵を切って以降、グリーンとデジタルの二語を聞かない日はありません。どのように理解すればいいですか。
 「グリーン社会の実現にはデジタルが欠かせません。これまでも環境対策を進めてきましたが、2021年の今はデジタルを使わないとグリーン化がこれ以上進まない状況ともいえます。中でも欠かせないのがデータ活用です。企業のサプライチェーンでの温室効果ガスを削減したり、地球全体の環境負荷を最小限に抑えたりするには、現状を把握する必要があります。どこでどれだけのムダがあるのかを「見える化」するにも、削減量を最適化するにもデータが必要になります」

「環境負荷はムダをなくすことが重要です。アパレルの大量廃棄や食品ロスなど業界を問わず需給のミスマッチが毎日どこかで生まれています。この状況を効率化するにはデータを共有することが第一歩になります」

―ゼロエミッションは実現できたとしても数十年先です。その間に地球環境も変わります。
 「温室効果ガスの排出削減で気候変動を食い止める手法(緩和策)は本質的ですが、即効性はあまり期待できません。すでに今、起こり始めている影響を軽減する手法(適応策)も必要です。例えば、2050年には気候変動はこれまで以上に激甚化するはずです。ただ、災害が多発するとしても、かつてのようにコンクリートの壁をとりあえずつくればいいという発想は成り立ちません。AIなどデジタルの技術を使って避難計画を策定したり、行動変容を促したりする仕組みが求められるでしょう」

「デジタル自体もグリーンにしていく必要があります。例えば、オンライン会議で必ずしも動画や高精細な図や表の資料が必要なのか。コロナ禍では疑問を抱かずに多くの人にとって標準になっていますが、この形は通信環境も不安定になるし、無駄な計算をコンピューターにさせています。『オンライン会議での動画や凝った資料は地球に優しくない』という視点もこれからは備えなければいけないかもしれません」

 

―資本主義社会は経済価値の最大化を目指して走ってきました。グリーン社会への実現は簡単ではないとの指摘もあります。
 「私はグリーンは道徳だと考えています。歴史を振り返ってもお金を生み出すためには、地球に負荷をかけた方が効率が良い時代が続きました。大量生産大量消費モデルがわかりやすい例ですね。これが行き詰まり、近年は経済と幸福の概念を両立させようという流れがあります。そして、これからは経済、幸福に加え道徳を考えることが社会の責務になってくるでしょう」

「地球に負荷をかけないことが直接お金を生み出すわけではありません。地球に負荷をかけることですぐに不幸になるわけでもありません。つまり従来の考え方ではグリーンの実現にメリットは少ない。そういう意味では社会的に影響が大きい企業がどこまで自発的に取り組むかがカギでしょう。すでに世界的な大企業がゼロエミッションを打ち出していますが実現には新たな仕組みが必要になります。仕組みができれば、グリーン関連のマーケットも生まれます。日本の環境関連技術のポテンシャルは低くありません。将来、日本企業が世界を先導していく好機でもあります。好機を活かすためにも、一社で取り組むのではなくコンソーシアムのような形が重要になるはずです」

《CEATECプレイベントのご紹介》
 10月19日から22日に、デジタル技術の総合展示会「CEATEC」がオンラインで開催される。今年度は初の試みとしてオンライン上でプレイベントを企画。「カーボンニュートラル(グリーン×デジタル)」を主題とする複数のセッションを、現在、CEATECウェブサイトで公開している。

「Green by Digitalで実現する脱炭素社会~デジタルソリューションによる貢献」をテーマとしたパネルセッションには江崎浩氏(東京大学大学院情報理工学系研究科教授/デジタル庁 Chief Architect)、青木雅博氏(日立製作所)、政井竜太氏(竹中工務店)の3氏が登壇。松本真由美氏(東京大学客員准教授/国際環境経済研究所理事)がモデレーターを務めた。

グリーンな社会、グリーンな暮らしが実現するカーボンニュートラルな未来を目指して、産業・経済活動の様々なシーンでどのようにデジタルを活用していくか。各界のキーパーソンが描く未来はもちろん、2021年の今、「Green x Digitalコンソーシアム」が設立される意義を理解するうえでも見逃せない。

【パネルディスカッション】Green by Digitalで実現する脱炭素社会~デジタルソリューションによる貢献

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