いち早く中国進出

　2004年には、中国進出を決めた。試作業界ではいち早い決断だったという。社長自ら中国へ赴いたときに今の中国子会社社長と出会い、立ち上げから今までともに苦労を重ね技術力を高めてきた。「今では中国で伊納可（イナック中国法人）と同レベルの試作をする企業は数えるほどしかない」（谷口社長）。日本から一人担当者を置いているが、そのほかはすべて現地採用で定着率が非常に良い。その秘訣はコミュニケーションだ。谷口社長は、従業員の結婚式にも出席するなど、プライベートでも家族ぐるみのつきあいをしている。やってもらって嬉しいこと、良い会社だなと思われることが重要だという。

　仕事の割合は日本６０％、中国４０％。２０年先を見据え、中国では中国単独の自動車系の仕事を重点的に取るようにしており「今後も自動車産業の伸びが期待できる」（谷口社長）。中国でプログラムを作り、日本の機械を動かすことで稼働時間を多くするなど連携を強化している。日本に引き続き、中国でも３Ｄプリンタに注目。国立の研究機関と金属積層３Ｄプリンタの研究を進めている。中国で導入したのち、日本に逆輸入する予定だ。

　国内でも地場の強みを生かした自動車産業に改めて注力している。「岡崎市はトヨタに近く、仲良くしている周りの企業もトヨタの仕事を代々やっている。その地域のつながりをこれからも大切にしたい」（谷口社長）。

　そのほか、顧客を広げる取組みも積極的に行っている。大田区で開催された展示会に出展したり、個別にビジネスマッチングを行うなど、中小機構の支援をおおいに活用。クリエイション・コア名古屋のインキュベーションマネージャーによる経営相談や「ものづくり補助金」申請に係るサポートも役立っているという。

　「同業者からまたイナックか、とあきれられる会社、いい意味で嫌がられる会社にしたい」と、谷口社長は同社のあり方を表現する。影響力の強い会社になるために、今後もさまざまな分野の仕事を高い技術力で実現していく。

会社概要
株式会社イナック
所在地　〒444-0811　愛知県岡崎市大西町揚枝23番地1
設立 1997年3月
事業内容　家電・自動車・アミューズメント・医療などの精密試作品製作
http://www.kk-inac.com/

クリエイション・コア名古屋（名古屋新事業創出型事業施設）のサイト
http://www.smrj.go.jp/incubation/nagoya/054273.html