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「デジタル×職人技」を強みに、国内外で影響力のある会社であり続ける

地方創生を支える!注目のベンチャー企業 #2 イナック
「デジタル×職人技」を強みに、国内外で影響力のある会社であり続ける

谷口 武司社長

 徳川家康の出身地である愛知県岡崎市。この地出身の「三河武士」は勇猛果敢で精強と言われている。それを体現しているような会社が、精密試作製作を行うイナックだ。

危機から立ち上がる


 社長の谷口 武司氏は試作一筋28年。もともと試作の会社に勤務していたが、1997年3月に独立しイナックを立ち上げた。しかし直後の1998年5月、前職場が倒産。独立後ももといた会社から仕事を引き受けていたイナックは、未収金4300万円を抱えることになってしまった。

 「3人の従業員と立ち上げたばかりの会社を守らなければと、総務部長をしていた妻と二人で毎日話し合っていました。正直潰れると思いましたが、社員の人生を預かっているので続けなければと」。谷口社長は当時を振り返る。当時試作のニーズが多かったこともあり、前職時代から今までの人脈を使いとにかく仕事を取りに行った。大手電機メーカーの担当者に呼ばれ、「大変だろう」と仕事をくれることが多かった。「そういってくれた企業の方々には今でも感謝していますし、何かあれば力になりたいと思っています」(谷口社長)。

 危機を乗り越えるため、技術力をつけて仕事を取っていくために最も重要だったのが人材教育。機械加工でも3Dプリンタでも機械のボタンを押せばできるわけではない。データ作成も最終仕上げも人が行うため、人で仕事に差が付く。個々の技術力強化にはとにかく現場での実践を大事にしているという。

 高い技術力ながら、社員30人、平均年齢35歳の若い社員が活躍している点も特徴だ。一人ひとりが得意分野と責任を持っていて、なおかつ多能工化で忙しい工程のヘルプに入ることもある。また、営業も加工を知るため現場作業に入り、逆に技術者も客先に営業と出向く。両方を知っていることで、営業は仕事を取ってくるとき、現場は加工をするときに会社全体を見通す目が養われる。

 他の職場を知ることは、社内の風通しの良さやコミュニケーションの活性化にもつながっている。谷口社長は「息子二人が『親父の会社はいい会社だから』と入社してくれた」と顔をほころばせる。

高い技術力で新たな加工を生み出す


 現在、試作だけでなく、設計・開発も手掛けているほか、2、3年前から新たな技術を導入。めっき、塗装、真空注型などでユニークな加工に挑戦しつづけている。「新技術に関してはそれぞれの従業員が自ら考え、会議で提案しています」(谷口社長)。例えば、成形した樹脂製品にアルミ蒸着めっきを施す工程では、被膜の薄い「ハーフ蒸着めっき」に挑戦。製品に光を当てるとめっきが光を透過させ、透明になったように見えるものだ。

 2013年12月には中小企業基盤整備機構(中小機構)が整備したクリエイション・コア名古屋に入居。3Dプリンタ(透明光造形機)を導入した。透明度がきわめて高いシーメット製TSR-829材を使用しているほか、仕上げ塗装など最終工程に力を入れている。「デジタル×職人技」を強みに、新規分野開拓や既存分野の強化を行っている。さらに、金型に進出するためDMG製5軸マシニングセンタを導入し試作以外の幅を広げる計画だ。
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昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
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