マックス針1針1針に込められた思い 工場長が語るモノづくりの力

工場管理2021年7月号「拝聴!ニッポンの工場長」より

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マックス 生産本部 藤岡工場長 松田 伸之氏

歴代工場長のイメージを引き継ぐも挫折フレンドリーで盛り立て役に徹しミーティングが活性化

ー玉村工場でさまざまな問題の解析方法を身につけ藤岡工場に戻った松田氏。待ち受けていたのはトラブルの解決だった。めっきした針金を伸ばす工程で針金が途中で切れる問題が発生していた。原因は潤滑剤で松田氏は化学の知見でこれを解決。その後は製造技術・品質課で課長などを経て、2017 年より工場長に。誰もが意見を言い合える活気ある環境づくりの“潤滑剤”として、「工程間仕掛品ゼロ」という究極のテーマに挑む。

工場長になるとは思っていませんでした。向かないと思っていましたから。工場長ってどこかビシーッとしていて近寄りがたいオーラを出す感じ。代々の工場長はそういうタイプでした。最初、そういう工場長になろうと頑張っていたのですが、1カ月も持たなかった(笑)。だったら工場全体を盛り上げる工場長になろうと。ピリッとした工場より、働くことが楽しいと思える工場にしていこうと変わっていきました。最近は工場全体に活気が出るようになったと言われています。特にミーティングが変わりました。

それまで私自身が感じていたことですが、発言しにくい会議って、出席すること自体が苦痛だなって。そこで、私は、会議に参加している感をもってもらうことが大事だと考え、間違ってもいいから言いたいことは言い合おうという方針で発表してもらうようにしました。発言したことは認め、はなから否定しない。誰もが発言しやすい空気をつくり、私もできるだけ話しかけられやすいように心がけています。今はどんどん意見が出ています。もともと私は人とコミュニケーションを取るのが好きで、入社後にあった販売実習では、営業の楽しさを知って、実習後「営業部に入れてください」と言ったくらいですから。さすがにその時は「理系だろ、ふざけるな」と言われましたが(笑)。

工場長としての最大のミッションは、工程間にある仕掛品をなくすこと。ほかの工場も同じで、もう7年間続いているテーマです。これまでは工程間に仕掛品があると、お客様から要望があったときにすぐつくれるから悪いという認識はなかった。でもそれを会社は「なくせ」という。仕掛品がなくなれば、設備が故障したり、急にオペレーターが休んだりすると生産が止まってしまう。思い切って休めないし出荷の予定も組めない。いろいろと課題が出てくる。つまり仕掛品をなくすことであえて課題を出すのです。するとどうしたら良いかをみんなが考えるようになる。

最近は各工程にモニターがつきました。工程間の連動性を高めるために前の情報がほしいというみんなの意見で設置されたのです。また従来一斉に行っていたラインメンテナンスもラインごとの稼働時間を分析して、日にちや時間を変えて動かしながら行うようになりました。メンテナンスのスケジュールはモニターで確認できます。これでやり忘れも不必要なメンテナンスもない。多能工化も進み、休みを思い切って取れるようになった。「これってムダじゃないか」ということがどんどん出てきて、みんなが自主的に動いている。工場がどんどん強くなっている。誰かに言われての改善は本当の改善ではない。みんなが本当に困ったことがあるから、痛い思いをするから必死に改善を考える。私はそれを聞いて会社の予算を考え、お金を使う。みんなの潤滑剤になるだけ。食堂やトイレのリニューアルも進んで、より使いやすい、リフレッシュしやすい環境も整備されています。みんながすごく喜んでくれた。今、仕掛在庫は半分まで減っています。

今でも針の箱詰めは内職者の手作業小さなホッチキスの針1本1本にものすごい思いとノウハウが詰まっている

内職者による針の箱詰め作業。自動化が進んでも内職者への依頼は続 けていく

強い工場にするためには、やるべきことはまだまだあります。針の箱詰めの自動化もその1つ。実は藤岡工場は操業開始から箱詰めは外の内職の今でも針の箱詰めは内職者の手作業小さなホッチキスの針1本1本にものすごい思いとノウハウが詰まっている方にお願いしていました。一般の方や障がい者施設の方などに幅広くやっていただいてきたのですが、それでも急な需要があると無理なお願いができず、お客様の要望に応えられないこともあった。そこで自動化を進めているのですが、すべてを自動化しようとはしていません。マックスという会社はそういった地域の方々に支えられてここまできた。

そこは忘れてはいけない。そもそも単純にコストだけを考えれば、海外でつくったほうが安くなる。でもそういう考えではなく、海外より安くつくれる強い工場になるよう、改善を積み重ねて頑張っているんです。小さなホッチキスの針ですが、ここにはものすごい技術やノウハウ、思いが詰まっている。だからこそこれから先も支えてきた人、未来のお客様のために、選ばれる工場として極限までリードタイムを減らし、品質を上げていきたい。この藤岡工場のみんなと一緒に。(取材・文 佐藤 さとる)

プロフィール
松田 伸之氏(まつだ のぶゆき)

1965年群馬生まれ。91年金沢大学大学院理学研究科卒業後、91年マックス㈱入社。生産技術部設備設計課に配属。いきなり4億円規模のめっきライン刷新に取り組む。2003年設備戦略推進プロジェクトで関連会社を支援。05年玉村工場品質保証部、製品品質課。12年に藤岡工場に戻り、製造技術・品質課などを経て17年より現職。小学校から大学まで水泳を続け、大学時代は北陸代表に。金メダリストの鈴木大地氏と泳いだこともある

マックス㈱ 藤岡工場
1963年8月操業開始。消耗品専用工場として事務機器、機工品などの各種ステープルや鉄筋結束機用ワイヤの生産をはじめ、オートステープラ用高精度針などを製造。素材から完成までの一貫製造システムを自社開発設備で構成。93年スクラップアンドビルドで再開発を実施し、97年に再開発完了。従業員数164名(派遣社員等含む)。敷地面積19,157㎡。所在地 〒375-0004 群馬県藤岡市森33-1
【販売サイトURL】

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【雑誌紹介】

雑誌名:工場管理 2021年7月特別増大号
 判型:B5判
 税込み価格:1,870円

【特集1】“モノづくりDX”ファーストステップ!
【特集2】間接業務効率化の切り札になる!はじめてのRPA

今、モノづくり現場で「DX(デジタル変革)」が声高に叫ばれているが、その広がりは諸外国に比べて遅い。その原因の根底には、「DXがなぜ必要か」「DXで何が起こるのか」への理解不足があるのではないだろうか。特集1では、「そもそもDXとは何か」といった基礎からモノづくり現場のDXをやさしく解説。モノづくりDX推進の具体的手法にも触れるとともに、実際にDX推進で変革に成功した企業の事例を紹介しながら、モノづくりDXによるビジネスモデル変革の実際を紹介する。 特集2では、業務の自動化システム「RPA(Robotic Process Automation)」について、初心者を対象にRPAの基礎知識や導入の進め方、活用イメージをわかりやすく解説する。

日刊工業新聞2021年7月11日

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