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アマゾン創業者の宇宙ベンチャー、一度打ち上げたロケットの垂直着陸に成功

世界初の快挙、ロケットの再利用に道
アマゾン創業者の宇宙ベンチャー、一度打ち上げたロケットの垂直着陸に成功

打ち上げられる「ニュー・シェパード」ロケット(Blue Origin提供)

 テレビドラマ「下町ロケット」では佃製作所の燃料バルブを搭載したロケット打ち上げで涙にむせび、24日にはH2Aロケット29号機による初の商業衛星打ち上げに日本中が沸く中、海の向こうの米国では23日、一度打ち上げたロケットの再利用に向けた実験が成功した。

 立役者はアマゾンの創業者兼CEOであるジェフ・ベゾス氏が立ち上げた宇宙ベンチャー、ブルー・オリジン(Blue Origin、ワシントン州)。米国初の宇宙飛行士アラン・シェパードにちなんで命名された「ニュー・シェパード(New Shepard)」ロケットが上空100kmまで達した後、垂直のまま下降、逆噴射で減速しながら、垂直の姿勢を保ったまま着陸を果たした。世界初の快挙という。

 通常のロケットは使い捨てだが、このロケットは着地した後の再利用を目的としており、その分、コスト低減が期待できる。ベゾス氏は声明で「上空での時速119マイルという強風にもかかわらず、ロケットがきちんとコントロールされた状態で着地した。完璧なミッションだ」と実験の成功を喜んだ。もともとブルー・オリジンではカプセルに最大6人の乗客を乗せ、宇宙の入り口ともいえる準軌道まで連れて行き、無重力と宇宙の眺めを個人が楽しむ宇宙旅行に利用する計画でいる。実験成功後、ベゾス氏はWSJなどの取材に対し、宇宙に人間を送る時期について「2017年には可能になるのではと思っている」と答えた。

 ロケットはウェストテキサスの発射場から打ち上げられ、所定の高さに達すると先端部のカプセルを分離、宇宙遊泳を数分間した後、カプセルはパラシュートで地上に落下した。一方のロケット本体(ロケットブースター)はそのまま下降し、高さ5000フィート(約1500m)の地点で再点火、時速4.4マイル(約7km)まで減速し、発射地点からわずか4.5フィート(1.4m)しか離れていない場所に垂直着陸した。

 再利用型のロケットについては、米テスラモーターズのイーロン・マスク氏がCEOを務める米スペースXも、「ファルコン9」ロケットで実験を重ねている。ただ、斜めの状態でロケットが降りてきて着陸用のバージに衝突・炎上したり、着陸はままだうまくいっていない。ワシントンポストによれば、スペースXでは、12月に着陸実験を行うとみられている。

「ニュー・シェパード」ロケットの打ち上げ・着陸映像
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
イーロン・マスクのスペースXが国際宇宙ステーションなどへの物資輸送(将来は有人飛行)などを想定しているのに対し、ブルー・オリジンは周回軌道手前での宇宙旅行が目的。そのため、ファルコン9ロケットに比べて、ニュー・シェパートは明らかに小さい。もしかすると、その大きさの違いが着地制御に影響しているのかもしれない。

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