演習に図面や模型を使う大学の建築学部、コロナ禍で授業はどうなった?
工学院大学などは同大と近畿大学が国内初となる建築学部開設10周年を記念したオンラインイベント「建築学部 これまでとこれから」を開催した。同学部は理系と文系の要素があり、演習に図面や模型を使う独特の授業スタイルが特徴だ。イベントでは同学部を設置する9大学が参加し、コロナ禍におけるオンライン授業の評価など白熱した議論が交わされた。(編集委員・山本佳世子)
学びの多様化を反映し、建築に「情報」や「環境」などを加えた学部・学科も多い。しかし建築は芸術や歴史との関わりも深いことから、多様な分野を網羅した「スクール・オブ・アーキテクチャー(建築学部)が世界の標準だ」と工学院大の野澤康教授(前建築学部長)は強調する。
イベントは約500人が聴講した。建築学部を持つ9大学がそれぞれの特色などを紹介したプレゼンテーションを実施。これらを踏まえ、コロナ禍の授業のあり方を中心とした議論に移った。
参加校からは「実習や実験で3次元空間を実感する体験がなくなる」(日本工業大学)、「(建物や景観など)現地に出向いて肌で感じることができない」(芝浦工業大学)などコロナ禍の現状を心配する声が相次いだ。
東北工業大学は図面トレースなど普通科の高校または工業高校の出身の違いで経験差があることを背景に、対面による「同じ教室で教え合い刺激し合う重要性」を訴えた。武庫川女子大学からは「各学生専用の製図机でA1サイズの設計図を書いたり模型を作ったり。(大学に)学生が“住み着いている”だけに登校を希望する声が強い」との紹介もあった。
一方で、オンライン授業のメリットも報告された。明星大学は120人収容の教室に30人という対面授業の中で、見えにくい手元やスケッチはオンラインで共有し、「一緒に学んでいる感覚が得られる」と指摘する。金沢工業大学も設計指導など「通常は1―数人だが、オンライン上では十数人の学生が注視する形になった」。また、「学生とのやりとりを各大学が丁寧にすれば基礎科目の授業をすべてオンラインとし、教材も共有で構わないのでは」(近畿大)との意見も出た。