全学の活動データを活用。電通大「IoT・AIキャンパス」プロジェクトとは?

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利用する学生が多かった時のCO2濃度のモニター画面(昨年2月=電通大提供)

電気通信大学は全学の活動データをIoT(モノのインターネット)で集め、人工知能(AI)で絞り込んで解析する「IoT・AIキャンパス」プロジェクトを開始した。2021年度中に認知症患者の生体・環境データを介護に生かす実証試験と、農業や商業など多様なデータを議論する場となる施設を整備する。同大はこれまでセンサーやカメラを配置した学修空間での研究から、新型コロナウイルス感染症の対策などを示してきた。

電気通信大学は認知症患者の徘徊(はいかい)や暴力を防ぐ実証研究に東京都などと取り組む。食事スペースやベッドを備えた仮想の介護施設を学内に置き、センサーやカメラのビッグデータ(大量データ)をAIで分析。問題行動の予測につながるかどうか、介護・医療の専門家と連携して検証する。

さらにビッグデータを可視化した後、実社会で適応が妥当かどうか議論する「オブザベートリー」の施設を設ける。スマート農業やスポーツスタジアム運営、市民生活支援などの学内研究を地域連携で発展させる。21年度に施設を改修して、これら二つを整備する。

電通大はIoT・AI融合の実験空間を兼ねた図書館併設の学修スペース「アゴラ」を持つ。人の動きを把握する人感センサーのほか、二酸化炭素(CO2)、温湿度など200台近いセンサーとネットワークカメラ約20台がある。

これまでデータ収集と解析により、眠気を誘うCO2濃度が上がりやすい場所や、新型コロナ対策として効果的なサーキュレーターの設置などを研究してきた。ビッグデータから理解可能なデータ構造を導く位相的データ解析の手法を導入し、エネルギー消費を抑えた換気手法の高度化を進めている。

日刊工業新聞2021年4月22日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

21年度に動きだすものとして、記事では認知症患者の実証試験を先に紹介したが、これだけだと「うちも似た研究をしているよ」との声があがるかもしれない。私がひきつけられたのは電通大が、アクティブラーニングのスペースを整備する数年前の段階で、そこを多様なセンサーやカメラを埋め込んだIoT空間にして、実証研究に取り組んでいるという点だ。つまり学内の様々な活動でも、個別の研究テーマでも、IoTとAIをフルに導入し、全学を実証実験の場にしようという戦略だ。情報と通信に強い中小規模大学ならではのものだが、こういった研究・教育・大学運営のリンクのさせ方は、他大学からも注目されるのではないだろうか。

キーワード
電気通信大学 AI IoT

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