グーグル、アマゾン、フェイスブック…AI開発加速へ。ソフトウエアツール相次ぎ提供
アップルもAI強化に動くが、プライバシー尊重・秘密主義が仇に?
アップルとグーグルのアプローチは対照的
一方、アップルはAIや機械学習専門家の大量採用に乗り出したほか、今年10月には、AIを使った音声認識技術を持つ英ボーカルIQ(VocalIQ)、深層学習の画像認識技術を持つ米パーセプティオ(Perceptio)と、立て続けにAIベンチャーを買収。ロイターはアップルの元従業員の話として、機械学習の専門家の数がここ数年で3倍から4倍に増えていると報じた。
アップルが人工知能に肩入れするのは、2010年に買収したパーソナルアシスタント「Siri(シリ)」や、グーグルナウのようにユーザーが必要とする情報を先回りして知らせるインテリジェント・リマインダーの機能強化が主な狙いと見られる。さらに、開発中とささやかれる電気自動車の自動運転機能にもAI技術を盛り込むものと思われる。
ただ、グーグルなどとアップルのアプローチは根本的に異なる。グーグルはユーザーが打ち込んだ大量の情報を収集し、ビッグデータ解析を行うのに対して、アップルはユーザーのプライバシーを尊重し、あくまで匿名情報として利用。アップルIDと収集データをひも付けしない方針だ。
一般的には、両者をリンクさせ、習慣などの個人情報が多ければ多いほど、特定のユーザーが何を欲しているのか予測しやすくなる。そうしたことから、ロイターは専門家の話として、プライバシーの尊重が、機械学習でスマートフォンをより賢くしていく上での障害になるのではないかという見方を紹介している。
http://www.reuters.com/article/2015/09/07/us-apple-machinelearning-idUSKCN0R71H020150907#fdbshMIA3Yty3Mwk.97
加えて、ブルームバーグの報道によれば、アップルの極端な秘密主義がAI研究の邪魔になるとみている専門家も多い。グーグルやマイクロソフト、フェイスブック、IBM、バイドゥなどの研究者は、学会や国際会議で普通に論文発表するのとは対照的に、アップルの研究者は論文を出さない上、国際会議に来ないか、来たとしても社外の研究者とあまり交流しないためだ。
「アップルがその態度を変えない限り、(AIで)他社に後れをとったままになる。本当に優秀な人材は、すべてが秘密というクローズドな環境には行きたがらない」。AIのパイオニアでもあるトロント大学のユシュア・ベンジオ教授は、ブルームバーグの取材に対し、こうコメントしている。
アップルと同様に秘密主義で知られるアマゾンも、こうした状況に対応するためか少しずつやり方を変えてきているようだ。9月には、同社の研究者の一人が、画像と音声認識のAIシステムのより効率的な構築方法を提案する論文を発表した。複数のAI研究者によれば、アップルが同社初のAI関連の論文発表を近く予定しているとの噂があるという。唯我独尊のアップルもオープンな方向にポリシーを変える日が来るのかどうか。Siriに聞いてみよう。
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-10-29/apple-s-secrecy-hurts-its-ai-software-development
ニュースイッチオリジナル