静岡大学の地域連携、“知の拠点”として新産業創出につながるモノづくり

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成果報告会での様子(静岡大学提供)

新しい産業と新しい雇用を生み出す

静岡大学は地域と連携した取り組みを通して、地域活性化に貢献している。研究の成果などを事業化することを目的とした文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」に2016年に採択され、20年度で最終年度を迎えた。このプログラムには「事業化プロジェクト」として4つ、成長戦略の基盤となる「次世代コアプロジェクト」が5つあり、それぞれ成果が出始めている。

「新しい産業と新しい雇用を生み出す」―。事業プロデューサーを務める浜松市出身でスタンフォード大学循環器科の主任研究員である池野文昭氏は成果発表会でプログラムの意義をこう説明した。事業化経験を持つ人材を中心に、保有する技術についての市場調査をして使用感など情報を得て事業化を推進する。「浜松の未来を作っている」(池野氏)と産業振興を盛り上げ、世界へも挑戦していく。

同プログラムの中では静岡大や浜松市のほか、浜松医科大学、光産業創成大学院大学、静岡理工科大学などさまざまな機関がお互いの資源を共有し、地域で連携している。低侵襲立体内視鏡の開発などのメディカルフォトニクス応用の医療機器の開発が中心だが、それぞれのプロジェクトは、5年間で臨機応変にマーケットを変化させ、研究成果を広げてきた。

事業化プロジェクトの成果の1つとして、新しい低侵襲の立体内視鏡の製造・販売を目的とした浜松医科大学発ベンチャー「はままつメディカルソリューションズ」が19年に設立された。特定の製品を作って販売するためだけでなく、地域で出た医工連携のアイディアなども商品化できるような、新しい形の中小企業にしていくことが目標だ。現在、医療機器製造販売事業許可の申請を予定している。

具体的には浜松医科大が開発した低侵襲の立体内視鏡の開発もニーズを調査し、米国進出を視野に入れ事業化を進めている。一般的に、脳の手術は頭蓋骨に大きな穴をあけて行うことが多く、比較的侵襲性が高かった。開発した立体内視鏡は小さな穴で良いため、、顕微鏡の接眼部を覗くようにして両手で細かな手術が可能。両目に画像を映すことで立体的で距離感が分かるようになる。

「立体内視鏡鏡筒部(浜松医科大学提供)」

また、静岡大の川人祥二教授は屋外の中長距離でも高解像度測距撮像を可能にするハイブリッドToFイメージセンサーを開発。開発したセンサーはドローンやロボット、自動運転などの分野で応用が期待されており、ベンチャー企業で事業化できるよう進めている。

下平美文特任教授は人の目が感じることができる広範囲の色域を撮像できる、4Kカメラを開発。色の数値データだけでなく質感なども測ることが可能なため、人の目による定性的な検査を定量データ検査に置き換えることができる。パパラボ(浜松市)から今後市販されていく。

庭山雅嗣准教授は、組織酸素飽和度が分かるNIRSセンサーの開発を進めている。表層から約1-3ミリメートル程度の奥の正確な情報を得られるもので、より小型化を目指して開発を進めている。食道がんの手術で最適な縫合部位を見つけることに有用だとして、まず食道がん手術での事業化を計画する。

立体内視鏡システム(浜松医科大学提供)

このほか、次世代コアプロジェクトとしては回転機構を持たない固定型CTに使用可能なX線源の開発や、薬の効き方などの評価に高効率で簡便な測定法の開発、装置寿命の長い金型用材料の開発、手術後に傷口を保護するためのドレッシング材で抗菌性があるものの開発などが行っている。

シーズを開発、産学連携で企業が事業化

静岡大としてはシーズの開発を継続的に行いつつ、産学連携などで企業に事業化、商品化してもらうことで、特許実施料などを得ることを狙っている。こうして回収した資金を大学の研究に再投資することで、新しく事業化できる流れにつながれば、地域産業の活性化にも貢献できる。今後も地域の知の拠点として新産業創出に繋げるモノづくり技術を発展させていく。

同プログラムにおける静岡大学の取り組み
「光の尖端都市『浜松』が創成するメディカルフォトニクスの新技術“時空を超 えて女神の前髪をつかむ”」
2019年度地域イノベーション・エコシステム形成プログラムパンフレット
(文部科学省のサイトより)
文部科学省 地域イノベーション・エコシステム 形成プログラム
(静岡大学イノベーション社会連携推進機構のサイトより)

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静岡大学イノベーション社会連携推進機構

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