地域貢献や世界レベルの研究を並立へ。筑波大と東北大の光る個性
国立大学の個性を生かした改革の道筋に期待したい。
国立大学は現在進行中の第3期中期目標期間に「世界」「特色」「地域」と主な役割を絞ったが、他にない特色に地域貢献と世界レベルの研究を並立するのが目指すところだ。その意味で第4期で指定国立大となった筑波大学や、東日本大震災を経験した東北大学の取り組みは個性が光る。
文部科学省は国立大に対し2016年度から三つの枠組みによる評価を、さらに17年度から世界トップクラスを目指す大学を支援する指定国立大学制度をそれぞれ始めた。同制度での第3期の指定は旧帝大5校と、東京工業大学など単科の研究大学の7国立大学法人だった。
文科省は第4期の指定法人として、旧帝大でない総合大学で初めて、筑波大学を選んだ。このことは多数の地方総合大学を刺激した。
筑波大選定の理由として、各学生に適した学びを全教員1600人で進める「チュートリアル」(個別指導)教育や、時代に合わせた流動的な研究センターを挙げた。人づくりを重視する旧東京教育大学の伝統に、壁の低い学内組織など実験的な大学経営をリードしてきた同大ならではものだ。その上で研究などの高い目標値を挙げた。
東北大は3期でも指定されているが、震災復興の地域医療と、15万人超の生体データによる世界的な研究を両立してきた。災害科学の研究では、安全な町づくりという共通ビジョンで学際融合をし、政府の防災対策を支援する大学発ベンチャーも生みだした。個々の研究者が「効率向上など量の研究から何のため、だれのためという質に転換した」「自身の研究者寿命を超えた100年先を意識するよう変わった」と指摘するなど、「社会のために」という思いが構成員に浸透するのは、他にない大規模自然災害を経験した同大だからこそだ。
各国立大学は、何に挑戦し、新たなステージを目指すのか。22年度からの第4期中期目標期間を思案する上で、道筋を明確に示してもらいたい。
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