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電動×ステアリング、ヤマハ発動機の次世代操船システムがすごい!

電動×ステアリング、ヤマハ発動機の次世代操船システムがすごい!

ヤマハ発動機の次世代操船システム「HARMO」。水中でリムドライブ機構で推進している様子

小樽の運河クルーズで実証運航

「運行業務の負荷が低減する」「静かで会話もしやすい」-。ヤマハ発動機の主力であるランドモビリティ事業に継ぐマリン事業。そのマリン事業で電動モーターを動力とする推進機ユニットなどで構成する、次世代操船システム「HARMO(ハルモ)」を開発した。2019年秋に試作機が完成、20年8月から小樽運河クルーズ(北海道小樽市)で実証運航が始まった。

次世代操船システム「HARMO」の小樽での実証運航の様子

ハルモはジョイスティックによる直感的な操作が可能で、従来の船よりも簡単に操船できるほか、駆動音がほぼなく、走行時は燃料の燃焼に伴うにおいもない。運河クルーズでは、実際に操船する人や何度か船に乗ったことのある観光客からの評判も上々だ。

ハルモ、その正体は?

ハルモとは、なにか。電動モーターを動力とする推進機ユニットと動作制御するリモートコントロールボックス、操作をするジョイスティックなどで構成する、次世代操船システムプラットフォームだ。11年頃から開発を開始し、欧州を中心とした船の動力として電動化のニーズの高いオランダやドイツといった地で参考出展や試乗会を行うなど知見を積み上げてきた。推進機だけでなくシステムとして提供することで価値を高める。

ヤマハ発動機の次世代操船システム「HARMO」推進機部分

推進機のモータ駆動は、リムドライブ方式を採用。強い推進力が出せ、振動・駆動音が圧倒的に小さいことが特徴だ。また、舵角も従来の船外機よりも大きくできるため、シャープに動かすことができ、その場でのスムーズな回頭が可能だ。

「電動操船システムの開発は初の試みで、手探りでトライアンドエラーを繰り返した」(マリン企画統括部前島将樹氏)。モーターが水に浸かり続けることは今までになく、水が入らないようにするための防水の仕組みにも苦労したという。

低速に特化、観光市場での広がりに期待

ハルモは低速で走ることに特化している。ゆっくり景色を楽しむなど観光目的などでの使用を想定する。マーケティング統括部の加藤隆博氏は「湖畔や運河でのクルージングにマッチする」と話す。小樽運河クルーズでの実証運航を行っていることもあり、システムの改善をしながら導入できる市場を開拓する。

多様化する推進機ニーズに対して電動での取り組みを開始したヤマハ発動機。ハルモを含む電動化の推進は、同社が掲げる2030年に向けた長期ビジョンの「ART for Human Possibilities」にも繋がっている。長期ビジョンでは地球環境や社会を取り巻く課題を、製品や技術をもって解決することを目指している。同社は低速モビリティや電動2輪車、電動アシスト自転車、ドローンなど、多様な製品や電動化技術を通じて、より良い生活と社会の実現を目指している。

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