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福井・鯖江の老舗メガネメーカーはなぜ「10倍の手間」をかけるのか

マコト眼鏡×和える supported by ニュースイッチラボ
福井・鯖江の老舗メガネメーカーはなぜ「10倍の手間」をかけるのか

 

福井県鯖江市で作られるメガネは、「鯖江ブランド」としてここ数年で広く知られるようになった。その中でも、マコト眼鏡(福井県鯖江市)は「一番良い材料」を使い、職人の手作業と機械の良さを組み合わせ、使う人の快適さをとことん追求したメガネ「歩」を夫婦で作り続けている。

「安いメガネが市場に溢れ始め、メイド・イン・ジャパンの衰退に危機感を覚えた。長く使い続けられる、本当にいいメガネを作りたい」―増永昇司社長はこんな想いから、2000年に「歩」を立ち上げた。

福井県にメガネ作りを持ち込んだ始祖、増永五左衛門の血を受け継ぐ増永社長。「ファッションとして以前に、視力矯正器具として優れていなければ使う人にとって本当にいいメガネとは言えない」と強調する。その信念のもとに、素材、加工にこだわりを重ねてきた。

例えば、「歩」にはプラスチックメガネに近年多く使われるアセテートではなく、昔から使われているセルロイドを使用。加工しにくい一方で、変形が少なく、長年使っていても歪みにくい。骨組みにはチタンを使用し、軽さと錆びにくさ、耐久性を実現している。

また、「職人技」というと、すべてを手作業で行うことが良いかのように思われるというが、「メガネは全体のバランス調整が重要。手作業だけではブレが生じてしまう」(増永由美子副社長)。同社では、工程によって機械加工と手作業を組み合わせている。素材、加工ともに、昔から続く良さと、新しいものの良さを取り入れ、1つのメガネを作り上げている。

セルロイド眼鏡『歩』AYUMI AYUMI L1017 col.0907 (アユミブラック)

さらに、自社で商品企画から加工、仕上げをすべて行う同社ならではのサービスが、「鼻盛り」だ。プラスチックメガネの鼻当て部分を調整する際、鼻パッドシールを貼ったり、既製品の鼻パッドに付け替えたりする加工が一般的だ。しかし完全に個人の形状に合わせることは難しい。

そこで同社ではフレームを一度工場に引き取り、使用者に合わせて鼻パッドを一から作り直すような加工を行っている。「普通の10倍の手間がかかるが、正しい位置で掛けられるようになるまで何度でも行う」(増永社長)。職人の手による微妙な曲線が、快適なかけ心地を決めるという。

「歩」を続けてきて20年。開始当初に比べ、高くても良いものを求める人は増え、メガネ市場も揺り戻しが起こってきた感があると増永社長は見る。しかし「“鯖江”ブランドが周知されているわりに、そのモノづくりやこだわりへの認知度はまだ低い」と課題を抱える。そこでSNSや、イベントの開催など、積極的に情報発信を強化している。「エンドユーザーと直接交流し、ファンを増やしていきたい」(増永由美子副社長)。

イベントご案内

<オンライン開催>―『歩』の心地良さの秘密に迫る―
 『歩』の心地良さは、いったいどこから来るのだろう、そんな疑問をマコト眼鏡の工場で解き明かします。(Zoomを利用)
日時:2020年10月13日(火)18:00~19:30
参加申し込みはこちらから

案内人として株式会社 和える 代表 矢島里佳さんとその東京直営店 aeru meguroの店長 森 恵理佳さんのお二人にご参加いただき、(株)マコト眼鏡の工場とオンラインでつないで開催いたします。普段は公開していない 職人達の『歩』AYUMIを手掛けていく様子を新たな視点でご覧いただきたいと思います。また後半では参加者の皆様からの『歩』AYUMI についてのご質問なども交えながらお話する時間を設けさせていただこうと思います。また、当日のイベントを録画したものを後日お送りいたしますので、「当日は予定がある」という方も、是非お申込みください。

手にとっていただける機会【東京】―『歩』だけを限定で展示いたします―
 密をさけるため、特別にこの空間をお借りしました。
日時:2020年10月27日(火)28日(水)12:00~18:00(予約制)
場所: 〒141-0021 東京都品川区上大崎3-10-50シード花房山S+105 TEL03-6721-9624
参加申し込みはこちらから

<aeru meguroについて>
aeru meguroは、日本の伝統に出会える場所、そして先人の知恵が息づく0歳からの伝統ブランドaeruのお家として、その商品をご紹介している場所です。今回、密にならないように配慮したこの空間をお借りして、『歩』だけを限定で展示いたします。どうぞ、たくさんの『歩』を、安心してゆっくりご覧ください。また『歩』を学んでいらっしゃるaeruスタッフさんが新鮮な視点でご紹介くださいますので、きっと新しい気づきを感じられる機会になると思います。是非ご予約ください。

昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
取材前に、「歩」フレームを試しにかけてみました。私は鼻が低いのでセルフレームはずり落ちてしまうのが常だったのですが、調整なしでもピタッとはまり、とても驚きました。ここからさらに調整すると、一体どれだけ掛けやすいメガネになるのだろう…。オンライン工場見学では、「鼻盛り」の工程を実演してくださるそうです!

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