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博士志望者に朗報!生活費と就職先確保を文科省が支援

文部科学省は博士課程学生の生活費と就職先確保を、セットで支援する事業を2021年度に始める。各大学が自らの研究・教育戦略に基づいて、外部資金の間接経費や産学共同研究費の一部を博士支援に回し、その3分の2を文科省が補助する。これにより活力ある分野で博士進学率が高まり、好循環になると期待される。博士新1年生約1000人の支援から始める。概算要求で約29億円を計上した。

新事業ではまず各大学が、社会ニーズを含めて強化すべき分野など研究戦略を明確にする。これに合わせて修士課程修了後に博士課程へ進学した学生の経済支援と、博士号取得直後の雇用確保をするコースや奨学金を設定する。原資は大学側の外部研究費の間接経費や、直接経費によるリサーチアシスタント(RA)費などだ。これに対して文科省が補助する仕組みだ。

大学は分野により産学共同研究や研究インターンシップ(就業体験)を必須にしたり、海外研究機関の博士研究員(ポスドク)の雇用を獲得したりする。東京大学の卓越研究員事業や、京都大学の白眉プロジェクトがモデルになる。

事業設計の土台は内閣府の総合科学技術・イノベーション会議による「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」だ。博士学生は論文の筆頭著者の約2割を占め、研究者として対価を受けるべきだ、としている。

そのためアルバイトなしで研究に専念できる生活費相当(年180万円、月15万円)の受給を、新事業などで一般化しようとしている。

また政府は研究大学を支援する大型基金を計画している。将来は基金の運用益を博士学生支援に回すことも視野に入るが、先に新事業で道筋を付けることになりそうだ。

日刊工業新聞2020年10月1日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「大学フェローシップ創設事業」と文科省HP資料で銘打っているのがこれだ。社会ニーズの高い情報・AI、量子、材料など国が分野を指定するA型は30機関、人文・社会科学を含め自由度の高いB型は25機関。1機関当たり10-25人程度の支援となっている。

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