再生エネルギーは「高根の花」、本当に大企業で導入は進むのか

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再生エネの導入が相次ぐ理由に調達方法の多様化がある(イメージ)

事業所で使う電気全量を再生可能エネルギーに切り替える企業が増えている。「“再生エネ100%電気”の活用」とのメッセージは環境に配慮する企業として社外に発信しやすく、ベンチャー企業も含めた中堅企業などで導入が進む。だが、大企業にとって再生エネは高根の花のままだ。すべての企業が導入できる水準になるまで、国にはもう一段の再生エネ普及策が求められる。(取材=編集委員・松木喬)

TBM(東京都中央区)は8月1日、白石工場(宮城県白石市)で使う電力全量を再生エネ化する。新電力の自然電力(福岡市中央区)と契約し、再生エネ由来の電気を購入する。

TBMは石灰石が主成分でありながら自由な形状に加工できる新素材を開発し、2011年に設立したベンチャー企業だ。この新素材は、環境に配慮する企業に石油系プラスチックの代替素材として採用されており、TBMは製造時の環境負荷も下げて提供力を高めようと再生エネ電気の利用を決めた。白石工場が再生エネ電気を使用すると、同社全体の使用電気の94%が再生エネになる計算だ。25年には国内の全事業所で再生エネ100%の達成を目指す。

水処理事業の水ing(東京都港区)は、水処理薬品を製造する袖ケ浦事業所(千葉県袖ケ浦市)の電気全量を再生エネ化した。製造に伴う二酸化炭素(CO2)を削減し、顧客に訴求する。

工場で再生エネの導入が相次ぐ理由に調達方法の多様化がある。工場は敷地に設置した太陽光パネルが発電した電気を利用できるが、操業に必要な電気を賄えるほどの発電量はない。

そこで電力会社から再生エネ電気を購入する方法が選ばれている。以前なら電力会社が調達できる再生エネ電気は量が限られていた。今、再生エネを使ったと見なせる国の非化石証書を購入することで不足を補い、“実質・再生エネ100%”の電気を販売できるようになった。非化石証書はCO2ゼロなどの環境価値を形にしたもの。固定価格買い取り制度(FIT)で売電が認められた再生エネ発電所で作られた電気の価値を国が証書化し、18年から売り出している。

TBMの白石工場に電気を供給する自然電力は、再生エネ発電所で発電した電気と非化石証書を組み合わせた再生エネ電気を販売する。水ingが契約した荏原環境プラント(東京都大田区)も非化石証書付き電気を供給する。

オリックスも19年末、非化石証書を使った再生エネ電気を発売した。東亜ディーケーケーの本社、グランディハウスの本社など、オリックスグループも含めた6社10拠点以上に再生エネ電気の供給を始めており、現在も30拠点と商談中という。

非化石証書で量の問題は解決できたが、再生エネ電気の価格は割高ではないのかとの疑問が湧く。環境省は所管する新宿御苑の電気全量を再生エネに切り替えた。同省によると再生エネ電気は1キロワット時当たり17・1円で、従来と遜色のない価格だった。小泉進次郎環境相は「再生エネは決して高くないことを証明した」と強調する。

ただし、電力を大量に使う大規模事業所は、もともとの電気代が安い。同10円を切る契約価格もあり、大規模事業所となるとコスト面で見合う再生エネ電気が見当たらないの実情だ。再生エネ化できた企業の事業所は、新宿御苑のように10円台後半の電気を使っていたため、移行しやすかったと思われる。

大企業は国に改善を求めている。リコーは環境事業開発センター(静岡県御殿場市)で再生エネ電気の調達を始めたとはいえ、国内拠点の再生エネ比率は2%。欧州の50%以上、アジアの40%以上と比べると見劣りする。同社の山下良則社長は「日本での再生エネの調達は難しい」と小泉環境相に対策を求めた。大規模商業施設を運営するイオンの三宅香執行役も小泉環境相に対し「国のリーダーシップ、後押しがほしい」と訴えた。

ESG(環境・社会・企業統治)投資を支持する機関投資家が増えており、再生エネの活用が企業の評価基準となっている。そのため大企業は安くて大量の再生エネを求めている。小泉環境相は「再生エネの需要を拡大し、コストを下げることにつなげていきたい」と語り、自治体や国民に再生エネの活用を呼びかけていく考えを示している。経済産業省も再生エネの主力電源化に向けた施策を強化する方針だ。

産業界から再生エネを求める声が大きくなっている。政府も一体となり、普及に取り組む段階に入った。

日刊工業新聞2020年7月27日

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