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阪大、日大、理研も…新型コロナにAIで挑む研究機関たち

産業技術総合研究所などによる人工知能研究開発ネットワーク(AIジャパン)は、新型コロナウイルス感染症関連に人工知能(AI)を活用した23機関の取り組み69件をウェブサイトで公開した。急増する世界中の医療・生命科学の研究論文から必要な情報をAIで抜き出したり、人の移動データを追加したエージェント型の感染拡大シミュレーションをしたりする技術を一覧にした。

AIジャパンは政府の「AI戦略2019」を受けて2019年末に設立された。このほど109の大学・研究機関の参加で、活動を本格化した。

「新型コロナ×AI」の技術は感染把握・治療、疫学やシミュレーション、遠隔環境整備で三本柱だ。各件の内容に加え、「産業利用可」や「アイデア段階」などレベルを記し、会員間や共同研究希望の企業などで活用できる。

自粛要請など施策の判断は感染拡大シミュレーションに基づいており、この精度を高める技術が重要だ。大阪大学、日本大学、香川大学、産総研などが取り上げる。また論文やリポートの量や発表スピードは、研究者個人で対応できず支援が必要だ。理化学研究所、情報通信研究機構、お茶の水女子大学などが取り組む。今後は新しい生活様式の中長期テーマも追加し、充実させていく方針だ。学会や個別の産学連携を越えた情報と人材の交流で、AIと他分野の掛け合わせが進みそうだ。

日刊工業新聞2020年6月1日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「AI×サムシング」という発想は、新型コロナの発生前から出ていたが今回の動きは、こういった結びつきの重要性を実感させられるものとなった。融合研究の難しさにひるむ研究者を、大いに勇気づけるのではないか。またAIジャパンの参加大学は驚くほど多彩だ。聖マリアンナ医大、中京大、成蹊大、奈良県立医大、諏訪東京理科大、岡山理科大、羽衣国際大、小松大、沖縄国際大、足利大、広島工大、玉川大、琉球大、純真学園大、畿央大、群馬県立県民健康科学大…。AI×サムシングの研究は、研究型大学だけのものではないことも注目だ。

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