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日本の未来担う女性研究者、活躍をどう後押しするか

主要国では「博士学生の女性比率が高ければ、研究者に占める女性比率も高い」(文科省)傾向に
日本の未来担う女性研究者、活躍をどう後押しするか

2015年度サイエンス・エンジェルとして採用された女性研究者の卵たち(東北大提供)

 

企業の意識変化、ダイバーシティー戦略


 一方、数少ない女性研究者を抱える企業の意識も変わりつつある。日刊工業新聞社が7月に行った研究開発アンケートでは、有効回答236社のうち、61・4%が「性別」、42・1%が「国籍」を人材多様化(ダイバーシティー)の対象にすると答えた(複数回答)。企業では女性の活用もダイバーシティー戦略の一環としてとらえる向きがある。ただ、女性研究者を分野別に見るとどうだろうか。13年3月末時点の大学等における女性研究者の割合は、看護(90・2%)が最も高く、次いで、家政(81・9%)、心理学(42・6%)が続く。土木・建築(14・6%)や電気・通信(6・9%)、機械・船舶(5・2%)など、日本が強みを持つモノづくり分野で女性研究者が圧倒的に少ない。
 
 

女性視点評価に


 国は第3期科学技術基本計画で初めて、「女性研究者の採用割合を自然科学系全体で25%にする」との数値目標を掲げた。第4期ではさらに30%まで高めるとした。だが、これらの数字は現時点で達成できていない。JSTは、「従来の施策を継続しても、20年の女性研究者の比率は16・6%にとどまる」と予測している。

 今後は企業における女性研究者を積極的に増やすとともに、分野の一層の多様化が課題だろう。女性研究者のリーダーも育てなければならない。
 女性の視点を入れた人事、評価制度の確立も必要だ。年末にも策定される第5期基本計画で、どのような目標が掲げられるのか。日本の行く末がかかっている。
 
 【私はこう見る/日本女子大学名誉教授・元JST男女共同参画主監の小舘香椎子氏】
 
 日本は科学技術立国を目標に掲げて久しいが、少子化と理工系離れによって、科学技術の競争力の低下が危ぶまれている。女性研究者の底上げなど人材の多様化が急務だ。日本では、教育は機会均等であっても、女性の活躍の場が十分ではない。理工系のロールモデルがまだ少なく、将来が見通しにくい。

 例えば、女性研究者の割合で日本を追い抜いた韓国は、梨花女子大学に工学部を作り、国と経済界がタイアップして工学分野の女性を育てた。卒業生の多くが企業に採用され、工学を志す女性が増えた。活躍の場が用意されていれば、女性も気後れせず前に進める。

 女性に加えて、外国人の登用も重要だが、その前に海外で活躍している日本人のパワーをもっと活用できないだろうか。日本に呼び戻さなくとも、日本語を解し、日本で教育を受けた優秀な人に、国内の研究者と連携しながら国際化の風や人材を送り込んでもらう。そのような仕掛けや施策があってもよいのではないかと考える。
(文=藤木信穂)
日刊工業新聞2015年10月2日付深層断面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
今年のノーベル賞の発表は自然科学分野では10月5日から7日にかけて行われます。日本人の受賞はなるのでしょうか。

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