オンライン授業は大学教員の教育力の優劣をあぶり出す

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東大は全面的なオンライン授業への移行に踏み切った

新型コロナウイルスの対応で、大学はオンライン授業の準備・スタートに追われている。筆者は非常勤講師として技術コミュニケーションの講義を担当しており、双方向のテレビ会議や、別の時間帯に視聴してもらうオンデマンド型の体験がある。その経験から大きな課題があると以前から気になっていた。

それは「オンライン授業が普通になると、一般教養科目など大学ごとの開講に意味がなくなるのではないか」「大規模公開オンライン講義(MOOC)や、放送大学など通信制大学の科目で十分だとならないか」ということだ。逆に個性的で魅力ある授業はその大学の売りになり、MOOCの公開でも人気が殺到する、と過去の取材でも聞いていた。

筆者の授業は大学コンソーシアムの運営で、当初は「本当に北海道や九州の大学院生が同時に学んでいる」ことに単純に驚いた。そして東京での集合授業では、オンラインでのギャップを埋めるべく、対話を重視した演習指導に熱を込めた。

一方、今春の初体験はオンラインでの個別取材や会見だ。例えば東北大学は新型コロナ対応で計4億円規模の学生支援をオンライン会見で発表した。地元以外の記者も参加可能だ、と担当者がわざわざ声をかけてくれた。

これなら距離や会見場の広さは問題がない。通信環境の改善が進めば、主催者が小規模な機関でも、メディア企業に頼らず全会見をウェブ配信するケースが出てくるだろう。

教員も記者も従来は、知識や情報をあまねく伝えることが重要だった。昨今はそれだけでは不十分だとされ、その評価は“コロナ後”に一気に進むだろう。プロとしての資質や能力を、あらためて考えさせられている。

日刊工業新聞2020年5月4日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

「教育の評価は難しい」といわれてきた。教室で対面授業を受けている学生のアンケートくらいしか、善し悪しを問う手がなかったためだろう。しかしオンライン授業が一般的になれば、多くの人が(場合によっては学外人も)各教員の授業を目にすることが、仕組みとしては可能になる。そうすると、今までうやむやにしていた各教員の教育力の優劣が、見えてくるのではないか。研究力評価に次いで、教育力でも教員評価が進むことになるのかもしれない。 (※本文に出てくる筆者)

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