修士定員5割増…東大が情報系人材の育成で先陣を切れた理由

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東京大学大学院情報理工学系研究科は、2020年度の修士課程入学定員を前年度比5割増とした。情報・データサイエンスの国の事業予算に、東大独自の仕組みを組み合わせて、期限付きでない恒常的な教員ポストを3割増としたことで、定員増を可能にした。情報系人材の社会ニーズと志願者数が急伸する中、いち早く受け入れ環境を整備した東大が先陣を切った。国を挙げた情報系人材育成の具体策と合わせ、他の研究型大学の対応が注目される。

東大情報理工学系研究科の修士1学年の定員は従来158人だった。今春入学者から85人増の243人とする変更が文部科学省から認められた。教育の質を確保するためこれに先立ち、教員ポストを従来の100弱からここ4年で130に増強したのがポイントとなった。

国の事業は通常、5年など有期で、これによる雇用は任期制の特任教員に限られる。しかし大規模大学は有期事業の獲得が多く、それらをつなげることで長期の人件費を確保できる。そのため東大は「部局が持つ予算を使うのなら、特任ではない通常の教員ポストを新たに認める」という独自の仕組みを整備しており、今回はこれを活用した。

国立大学の教員人件費は、元手となる運営費交付金が厳しい状況に置かれている。そのため全部局から一定割合のポストを集めた上で、学長裁量で強化すべき分野に再配分するケースが増えている。この手法も活用した。

情報系、特にデータサイエンスや人工知能(AI)の人材育成は緊急の課題だ。学部や大学院の志願者も東大のほか京都大学、東京工業大学などで急増している。しかし人材育成の強化を可能にする手だてが遅れている。東大など「8大学情報系研究科長会議」は1月末、萩生田光一文科相に、実効的な施策を求める提言を提出した。

■キーワード/学生の定員

Q 「教員1人当たりの学生数」が決まっているとか。
 A 文部科学省令による大学設置基準で、学部生の収容定員(4学年合計)数に対する専任教員数が示されている。例えば「工学部は学生400人に教員14人」程度だ。

Q 学生が多すぎると教育上、問題だからだね。
 A そうだ。学部の学生受け入れは学年定員(1学年)の上下1割まで。これより多いと教育の質が落ち、少ないとそもそもの設計がおかしいとなる。私立大学は経営上、少ない教員で多くの学生を受け入れたいから、このあたりに敏感だ。

Q 国立大学ならでは、という事情は。
 A 学部では全学合計での定員を増やせない運用となっている。18歳人口の減少と私大の経営配慮が背景にある。そのため新学部・学科を設置するには、不人気の分野規模を小さくするなど改組して定員をシフトさせる。ただ大学院の定員については縛りがない。国立大は研究任務もあり教員が多く、1学年の学生数が大学院は学部より少ないことから、今回のような定員・教員増は珍しい。

日刊工業新聞2020年2月20日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

情報系人材の重要性は、政府が連呼し、社会的合意も得られていると思う。しかし定員問題など私もよくわかっていなかったため、「実効的な施策がなされていない」という8大学情報系研究科長会議の指摘は意外であり、そのような状況は問題だと感じる。また東大は若手など研究者の雇用で複数の独自手法を展開している。今回の「有期の任期雇用ポストは、大規模大学なら常に多数あるため、つなげて使うのなら、実質的には終身雇用ポストとなる」という戦略も、6年ほどだろうか、私はかなり前に耳にしていた。が、具体化は今回の取材で初めて知った。この手法は旧帝大クラスであれば、導入可能なのではないかと思う。

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