コスト高に政府が難色示す沖縄科技大、予算の抗議は贅沢な悩みか

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日本の国立大とは別格で世界と戦う沖縄科技大のキャンパス(同大提供)

世界トップクラスの研究・教育と沖縄振興を掲げる沖縄科学技術大学院大学(OIST=オイスト)。開学の2011年から交付金2000億円以上が投入され、高い競争率での人材獲得や優れた論文輩出で実績を出してきた。しかし近年は国からの財政支援について、大学には厳しい声が政府関係者から上がる。ピーター・グルース学長は「予算を安定させてもらわないと、半数以上を占める海外からの研究者の信頼を失ってしまう」と訴えて回っている。(取材=編集委員・山本佳世子)

【英語を公用語】

沖縄科技大は政府が資金の大半を用意する特殊な私立大学だ。英語を公用語に40以上の国・地域からの約1100人が所属する。教員が約80人、5年一貫の博士課程学生が約200人、博士研究員(ポスドク)が約450人と構成も独特だ。

何もないところからのスタートゆえ潤沢な予算で、欧米の研究型大学に負けない施設・設備や報酬を用意してきた。「(研究者の創造性を信頼して研究の自由度を与える)『ハイトラスト・ファンディング』で、最高の頭脳を採用する」とグルース学長は説明する。日本の国立大学は近年「ロートラスト・ファンディング」、つまり目的志向型プロジェクトの外部資金で、獲得競争を繰り広げざるを得ないのとは対極だ。

【競争率80倍】

教員雇用の中心は、無期雇用に向けた若手の有期雇用「テニュアトラック」制度の准教授で、ポスドク4人が雇用でき、当初年収は800万―1100万円。公募の競争率は約80倍だ。一流の教員の指導を希望する学生が集まり、入学の競争率も30倍近い。

【世界9位】

狙い通り研究成果は上がってきた。英科学誌ネイチャー関連で、著名学術誌への掲載割合をみた「科学論文の質」ランキングで19年に同大は世界9位と、東京大学の世界40位に差をつける。国際的な共同研究の比率も約6割で、日本の研究型大学より上を行く。

しかしここへ来てコストの高さに政府は難色を示している。運営費・施設整備費を合わせた予算は20年度が203億円で、19年度は196億円(補正予算を除く)。減額ではないが、教員20人増に合わせた研究機器の予算が認められず、成長分がカバーされない点が問題だという。グルース学長は「『OISTなら創造的な仕事ができる』と海外から研究者が来てくれるのに」と抗議する。国際的な質を維持しながら、財政的な安定をどう進めるか。国内外からの評価も無視できない。

日刊工業新聞2020年1月30

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

「普通とは違う」OISTの扱いは、予算減と改革の激しさに苦しむ多くの大学関係者に微妙な感情を生み出す。その状況下での同大学長の抗議だ。今回、メディア懇談会においての内容を使って「OISTはこう訴えている」という切り口で書いた。が、日本の標準とかけはなれた豊かさが土台となっているだけに、「訴えは逆効果にならないだろうか?」と個人的には気になった。

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