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自治体資金を引き出した阪大、カギは統合した大学の資源

国立大の昨年度業務で高評価

文部科学省の国立大学法人評価委員会は、国立大学法人・大学共同利用機関法人の2018年度業務評価を公表した。項目別の6段階の評定の中で最高の「特筆すべき進捗(しんちょく)状況」となったのは4件で、うち施設整備に自治体の資金を活用した岩手大学と大阪大学が挙げられた。健康増進プロジェクトの長崎大学、新たな年俸制を導入した北陸先端科学技術大学院大学も評価された。

岩手大は釜石キャンパス(岩手県釜石市)の総合教育研究棟(水産系)の実験室などを、岩手県や釜石市の補助金で整備した。新築の教育施設への自治体補助金活用は全国初だ。阪大は新・箕面キャンパス(大阪府箕面市)の6階建て施設で、図書館や生涯学習センターを同市と一体的に動かす。市が施設整備をし、大学が管理運営を担う。

北陸先端大の新年俸制は、各教員の活動を教育、研究、社会貢献、大学運営、外部資金獲得の5項目で評価し、合計点の組織内順位でS―Dの相対評価を行う。これに対応する業績連動給と、職位(助教―教授)ごとの基本給で、各教員の給与を決める仕組みだ。

日刊工業新聞2019年11月26日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
阪大の事例では箕面(みのお)市の蔵書11万冊に、同大の外国学図書館60万冊を合わせて、市民が活用できる図書館となる。これは阪大が統合した旧大阪外国語大学の箕面(みのお)キャンパスを移転するのに、市と連携して市が建物費を負担するという関係性だ。生涯学習でも市と大学の両機能の相乗効果が図れる。特色ある小規模大学の資源を生かし、国費に頼らずに建物整備を進めた点が、高い評価につながったようだ。

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