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iPhone登場でモックアップ受注激減、時代のニーズに翻弄された部品加工の倒産劇

大和産業、売り上げはピークの6分の1程度に
iPhone登場でモックアップ受注激減、時代のニーズに翻弄された部品加工の倒産劇

iPhoneを生んだスティーブ・ジョブズ氏とアップルのティム・クックCEO(写真はイメージ)

 1975年6月、大和産業は工業用ゴムや合成樹脂製品の販売を目的に設立。時代のニーズに合わせて事業を発展させ、2000年代に入ってからは携帯電話向けモックアップ(展示用模型)、ディスプレー、タッチパネルの生産に注力していた。モックアップ事業が移動通信システムの発展による携帯電話の買い替え需要に乗って急拡大し、03年3月期に約22億5500万円だった年売上高はピークとなる08年3月期には約105億5100万円にまで増加した。

だが、米アップルのiPhone(アイフォーン)の日本発売をきっかけに08年中頃から携帯電話市場でスマートフォンへの移行が加速。高機能化が進んだことで主要事業であったモックアップの受注が激減。加えてリーマン・ショックにより、他事業でも大口得意先からの注文が薄れ、翌09年3月期の年売上高は約75億2600万円に減少した。以降も業績は悪化し、17年3月期は約17億6000万円とピーク時の6分の1程度に縮小していた。

さらに中国投資の失敗が続いた。2000年代に入り、大口顧客であるゲーム機メーカー向けのスクリーンカバー製造に商機を見いだし、金融機関から多額の融資を得て中国への工場進出や子会社設立を進めた。しかし、その後の景気低迷で同社からの受注が激減。15年には中国工場の閉鎖を余儀なくされ、多額の投資は一切回収できない状況となり、過剰債務が残った。

15年6月には金融機関へリスケを要請し、大阪府中小企業再生支援協議会の支援を得て自主再建を目指していた。そうしたなか、18年秋ごろに未払い金の発生などによる信用力低下を背景に主要調達先であった中国企業との関係が悪化。同社からの調達が断たれたことで一部商品の製造ができなくなる。その後は自主再建を諦めてスポンサー探しに奔走していたが、5月31日をもって事業を停止し、自己破産を申請するに至った。
(取材・帝国データバンク情報部)
<企業概要>
(株)大和産業
住所:堺市堺区中安井町3―4―11
代表:原田富太郎氏
資本金:1億円
年売上高:約14億6400万円(19年3月期)
負債:約22億9300万円
日刊工業新聞2019年9月17日

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