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文科省が活躍を後押しする「実務家教員」の価値

養成事業に4校5件を採択
 文部科学省は産業界や自治体などでの実務経験を生かした「実務家教員」を養成する事業で、初年度の2019年度採択を4校5件で決めた。全体の取りまとめもする東北大学のほか名古屋市立大学、社会情報大学院大学、舞鶴工業高等専門学校がそれぞれ中核拠点となる。共同申請校とともに産学連携で、企業や地域ニーズに合った社会人教育の担い手となる実務家教員を増やしていく。

 この「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」は社会人の学び直し(リカレント)教育に重要な、社会ニーズの高い実践的な人材を育成するため、実務家教員の活躍を後押しする。10件の申請から、国公私立大学と高専でバランスのとれた5件が採択された。

 東北大は規模の大きさを生かして数十の企業などと連携、多分野を対象とした中核拠点となる。また全体の運営拠点として、育成プログラムの標準化や、修了者と採用を希望する大学をマッチングする役目も担う。

 舞鶴工業高専は橋梁などインフラストラクチャーの老朽化対策の人材ニーズに、名古屋市立大学は防災分野などのリーダー育成に焦点を当てている。

              

キーワード/実務家教員


Q 実務家教員とは何なのか。

A 企業や自治体などでの実務経験を持って、教育研究の指導をする教員を指す。大学など高等教育機関の伝統的な教員は学術研究をベースにしており、それとの対比で使われる。最近では新任教員全体の2―3割、年1500―2000人がそうだといわれる。

Q そんなにいるなんて意外だな。いつごろからだろう。

A 10数年前に始まった専門職大学院はビジネススクールや法科大学院が代表で、専任教員の3割以上の実務家教員が求められている。今春から制度が始まった専門職大学では4割以上だ。高度で実践的な大学教育を、社会が求めるようになってきた背景がある。

Q 高等教育無償化でも出てきたよ。

A 無償化の対象となる機関の要件で「実務経験のある教員の授業科目が標準単位数の1割以上」が入った。社会や地域のニーズに沿った人材育成に、実務家教員が貢献すると認識されているためだ。職業のキャリアアップを目指す社会人教育でもそうで実務家教員の人気は高まってきそうだ。
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
大学教員に憧れる社会人にとって一大チャンスが訪れている。ただし、これまでであれば実務経験を話すだけで「先生」と呼ばれていたが、「そのレベルでは問題あり」と示された格好でもある。産業界や地域が求める社会人学び直しの内容はどんなものなのか。その内容を実務家教員はどんな形で教えるのか。内容がきちんと伝わり、社会人の受講生の力を本当に高めるものになるのか。実務家教員が社会に浸透するには、こういった教育の質を確保することが必須となってきている。

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